● 今月の特集
いざなぎ景気を超える好景気と言われてもピンと来ない経営者、社員の方も多いのではないでしょうか? いざなぎ景気とは現在の景気と比較すれば一目瞭然です。いざなぎ景気ではGNPが2.4倍程度大きくなりましたが、今回の景気では僅か1.04倍程度しかGNPを拡大していないそうです。また、サラリーマンの所得が2倍強となったいざなぎ景気に比べて、今回の景気は逆に所得が0.98倍と減少しているらしいので、確かに景気がいいという実感が湧かないはずです。バブル崩壊以降中小企業では、売上激減、大手企業の下請け単価の切り下げに人件費の削減で、かろうじて企業存続できたという構造が、この好景気でも下請け単価の引き上げにつながっておらず、飲食・小売業等一般消費者相手の商売の方が好景気の恩恵を受けつつあるのではないでしょうか。直近の動向としては人出不足の傾向が強く、人材派遣・アルバイト等の給与が急上昇しており、それでも必要な人材が確保できない傾向が、小売・飲食等から重要の多いIT産業まで広範囲に広がっていることです。 このように先行き不安な景気動向の渦中にあって、企業は黒字経営が存続の絶対条件です。今回は黒字経営を実践している多くの企業で採用されている経営管理の手法として【経営会議】を紹介したいと思います。 黒字経営を可能とする経営会議の手順 経営会議とは? [手順1]黒字の経営計画を立てる [手順2]正確な月次決算を行う [手順3]月次定例の経営会議の実施する [手順4]議事録を作成する 以上のサイクルで経営管理する手法です。今月は[手順1]の黒字の経営計画を立てる方法を検討します。 黒字の経営計画を立てる[手順1] 経営計画は損益計画と資金計画から成立しています。まず黒字の損益計画を立て、次にその損益計画から資金計画を作成します。 経営計画…損益計画…資金計画 1.黒字損益計画の簡単な作り方 (1)直近の1年間の損益推移表を用意ください。 (2)まず販売費及び一般管理費・営業外計画から作成します。 損益推移表の月別推移表から販売費及び一般管理費の中で異常値を摘出します。
結果、4月 打ち上げパーティー費用 11月 社員旅行費用の会社負担分として、次年度は、300,000円 11月 1,000,000円を予算化し、交際費は20周年パーティー費用で本年はなし、8月の支払利息は1年1回の支払で、来年はないとのこと。他の経費については、格別大きな変動はなしとして計画しました。 (3)人件費計画を立てます。 実際の役員・従業員の次年度の月額報酬、予定給与、法定福利費を見積もります。小さな会社ですと 、1人の個人別給与を見積もり、積み上げても大した手間ではありません。 平成19年度月額給与表 ○○会社
これで固定費【売上0円でもかかる費用】のあらかたの数値が決まりました。 ■ワンポイントアドバイス 業種によって、売上と直接連動して費用が増減する科目があります。例えば、通販事業の広告宣伝費や飲食・小売のアルバイトの雑給等があります。これらは財務会計で販売費で処理されますが、月次決算書では、売上原価項目にし、販売費及び管理費は固定的費用になるものを集めると経営者は見やすくなります。逆に売上原価項目、製造原価項目となっている賃金はほとんど固定費に近い会社があります。そのような会社であれば、販売費の給与と等しく賃金勘定を販管費として処理することも一考です。 こうすることによって経営者は一目で、自社の毎月絶対必要なお金がいくらぐらいかがすぐ分かります。事例の会社ですと、最低1月の560万円、最高12月の750万円で、平均580万円程度のお金と粗利が必要と判断できます。 (4)最後に、売上と売上原価の作成ですが、簡単な作成と業種別の特徴について説明します。
(2)業種別月次予算の作成の仕方
事例の会社はサービス業で、個別の得意先別売上計算をして月次予算化されています。 以上の結果、下記のような月次損益予算が出来上がります。 ■ワンポイントアドバイス 損益計画から資金計画を作成し、資金繰りが成り立たない損益計画であれば、(1)金融機関に返済条件の緩和 (2)資産の売却による借入金の減額 (3)今一度損益計画に立ち戻り、収益力の確保による返済能力の増額を可能とする。等を検討していきます。 2.資金計画を立てる 損益計画から資金計画を立てます。 資金計画の簡単な作り方
資金計画の作り方を参考にしながら、損益計画から資金計画を作成します。 ■資金計画から損益計画を見直す 損益計画から資金計画を立てましたが、最終チェックは資金計画で資金繰りが成立するかどうかです。 例え損益計画が黒字になっても、資金計画が黒字にならなければ企業は倒産してしまいます。営業収支の範囲で財務収支が賄えるかがポイントです。簡単に言えば、売掛金・商品在庫の増加、借入金の返済、新規設備投資金額が営業上の資金黒字+新規借入金の増加と賄えるかどうかです。資金繰りが回らないときは、(1)銀行借入金が可能か、(2)新規設備投資を借入金・リース等で実施するか、(3)売掛回収、在庫処分、資産処分等を検討するか、最後の手段として、資金が回転する損益計画、もっと利益を出す損益計画を作り直すかを考える必要が出てきます。 以上の作業を経て、経営計画【損益計画・資金計画】を作成します。 経営計画書を印刷し、資金計画はまだしも損益計画だけでも全社員に公開し、予算達成の場合の成果報酬を公表すれば、社員のやる気も出てきます。 この場合、公開用の損益計画と資金繰り用の損益計画と複数の損益予算を作成されている会社が多いようです。 資金繰り用の損益計画の目的… 資金繰りが廻るかどうかの損益計画であり、絶対可能な損益計画となります。資金繰りが可能かの判断ですから、絶対可能な数値でなければ倒産してしまいます。希望的観測を避け、計画段階で各人の給与減額があるかもしれないような利益水準で計画すべきです。(その利益を下廻った場合、役員、社員の減俸もありうる売上・利益数値) 公表用の損益計画… 目標損益計画とも言うべき、前期比より常に上方予算となります。どんなに厳しくとも(不況等)、前期より1円でも上回る売上、特に売上総利益、営業利益を目標にすべきです。下回る目標を立てた時点でその会社は負け組に荷担しています。1円でも上回るためには、商品力、企画力、技術力、サービス、創造力等が成長していかなければ達成不可能だからです。 公表用の損益計画に実績が上回った場合、利益の何%かを社員に還元されている会社が多いです。決算賞与を予算達成で還元すれば、社員の創造力、付加価値は上がるのではないでしょうか?
経営会議・役員会等で経過月実績+未経過月予算=予想決算数値を見ながら多くの経営者達は必死で黒字決算にするための創意工夫、経営判断、意思決定をされています。 会社の予想決算を見ながら経営の舵取りをする訳ですから、抽象的かつ精神論等は出てきません。具体的な数値が飛び出す経営会議となります。 ※予想決算が赤字の場合…意思決定の事例を列挙しますと (1)一番多くかつ簡単な事【経営陣の報酬カット】… 税務上の問題もあり、下げた場合は、定時株主総会まで変更不可。
(3)売上増加対策… 方法は2つ。時間軸と空間軸で考えられています。空間軸とは、1部門・1店舗の利幅が減少しても店舗・部門が増加すればいいと考えられ、他店舗展開、部門、拠点増加対策等を立てられ、実行します。時間軸とは、商品・サービスの質向上、付加価値の増加等で対応することです。会計事務所を例にとって説明すれば、税理士法人設立・支店展開、記帳代行会社の設立、格安会計・税務パックの販売、インターネット活用等で、時間軸とは、【経営会議】等による顧問先の提案業務、経営監査部門、資金繰り・業務改善等のコンサルテイング業務への進出等があります。 (4)原価減少対策… 適正原価率の設定とムリ・ムダ・ムラの排除…原価率の異常部門、店舗等でその原因を調査し、対策を打ちます。仕入先の変更、管理方法等を見直します。 月次ではなく、日次で原価率を補足し、改善していきます。 (5)人件費対策… まず予想決算で1人あたりの売上総利益を算出します。1人あたり売上総利益が800万円以下なら人員過多か生産性に問題があります。はっきりと言えば、きちんと働いていないか、価格が安いかどちらかです。価格の引き上げが無理なら人員整理か給与減額が必要です。 バイトの管理はバイト投入金=投入時間×平均時給で売上を割って、投入時間売上を毎日付けてください。適正時間売上を設定し、【例 5,000円】を厳守し、不必要なアルバイトを置かない対策を徹底化してください。
以上大枠の対策を述べましたが、会社の損益の構造を良く理解することです。 売 上 100% 原 価 30% 売上総利益 70% 人件費 30% 経 費 30% 営業利益 10% このような会社では、原価・人件費で60%を占めています。経費30%の中で大きなものは家賃等程度しかありません。原価・人件費・家賃等をまず管理することです。経費のうちの80%が管理できます。大きなお金を管理してから小さな経費を管理します。小さな経費の管理に時間を費やすことはムダになります。
不況や経営環境が厳しいほど企業は成長します。ピンチをチャンスに変える前向きな経営姿勢が一番の宝です。役員みんなの意志を1つにして前向きな経営改善を図るためにも月1回の定例の役員会を開催されてはいかがですか?
社会保険労務士 酒井 健雄
かつて、使用者の安全配慮義務は信義則上の付随義務とされていましたが、昨今の判例では、労働契約における使用者の本質的義務とされています。 また、安全配慮義務違反による損害賠償額が高額になり、たとえ業務上災害と認定されても労災保険からの補償額ではまかないきれないケース、労災保険では給付の対象とならない慰謝料を別途請求されるケース、などが増えています。安全配慮義務は、企業にとって避けて通ることができない問題になっています。 睡眠6時間未満の場合に脳・心臓血管障害が増加します 1日の生活の中で時間外労働に充てることができる時間数(24時間から生活を営む上で必要な睡眠(6時間)・食事・仕事等を差し引いた時間数)に1カ月の平均勤務日数21.7日を乗じた概数が「80時間」になります。1カ月の時間外労働時間数が80時間を超えると脳・心臓血管障害が増加します。 脳・心臓疾患の発症のリスクが高まる睡眠5時間の場合であれば、1カ月の時間外労働時間数は「100時間」になります。 もっとも健康的な睡眠時間である7時間30分の場合であれば、1カ月の時間外労働時間数は「45時間」になります。 平成18年4月から労働安全衛生法が改正されています 長時間にわたる過重な労働は疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられ、さらには脳・心臓疾患の発症との関連性が強いという医学的知見が得られています。 「過重労働による健康障害を防止するため事業者が講ずべき措置」が定められました。
産業医は、長時間労働をした労働者に対して申し出を「勧奨」することができます。 事業者は、申し出ができることを労働者に周知することが必要です。 常用労働者数50人未満の小規模事業場については、平成20年3月31日までは適用されません。 企業の安全配慮義務が問われています 発症前1週間の時間外労働をもとに、横浜南労基署がくも膜下出血を業務外と判断した事件、西宮労基署が高血圧性脳出血を業務外と判断した事件、ではいずれも最高裁まで争われて、長期間にわたる業務による疲労の蓄積が、脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼす過重負荷として考慮されるとされました。 これを受けて労災保険の過労死・過労自殺の認定基準の基本が以下のように改正されました。
長期にわたる長時間労働による労災保険の認定基準が示されたことにより、企業が長時間労働による社員の心身の健康状態の悪化の防止に配慮することは当然のこととされ、企業の安全配慮義務が問われることは当然のこととなっています。 電通事件では過労自殺した事件が最高裁まで争われ、1億6,857万円で和解しています。 電通事件とは、入社1年5カ月の社員が長時間労働(慢性的に5日に1、2回深夜まで、自殺直前1カ月では3日に1回の徹夜残業等)を強いられたためにうつ病に陥り、その結果自殺に追い込まれたとして、遺族が企業に対して損害賠償を請求した事件です。 自殺した社員の上司は、社員が恒常的に著しく長時間にわたり業務に従事していることおよびその健康状態が悪化していることを認識しながら、その負担を軽減させるための措置を採らなかった為、企業に民法715条(使用者責任)に基づく損害賠償責任があるものとされました。 この事件を契機として、企業の安全配慮義務は設備の危険性のみならず、社員の健康への配慮義務も問われることになり、また請求額・和解金額もきわめて高額になってきています。 長時間労働による過重労働が問われることはもとより、企業が労働安全衛生法に基づく適切な対応を行っていたかどうかも問われることになります。 |
Copyright(C) PROFIT CORPORATION 2007, All rights reserved. Copyright(C) SEIKO EPSON CORPORATION 2007, All rights reserved. |