IPO虎の巻

 序の三 上場準備の第一歩とは?
執筆:IPO総合研究所  森田弘昭

 株式を上場するためには、証券取引所に株式の上場を申請し、証券取引所の審査を受け、その厳しい審査を通過して上場承認を受けることになります。

 すなわち、上場審査をパスしなければ上場が実現しないわけですから、そのための準備が非常に重要であり、また大変なわけです。

 それだけに、上場準備は効率の良い、ポイントを外さないものにしなければなりません。大事なことは、“無駄な準備”をしないということです。そのためには、「審査にパスするための準備」と同時に「上場後のことも踏まえた準備」を進めないと本当の準備とはいえません。今回は、効率的な上場準備の秘訣を披露しましょう。


上場準備のスタートは「セグメントの確定」から

 上場準備、すなわち上場審査に対応するための準備は、ずばり「セグメントの確定」からスタートします。これを抜かして上場準備に入っても、間違いなく途中で作業が行き詰まることになるでしょう。

 では、「セグメント」とは何でしょうか?

 上場会社に求められる有価証券報告書や有価証券届出書の「事業の状況」の中には、「品目別販売実績」を記載しなければなりません。「会社四季報」や「会社情報」等にも、各会社の事業区分が記載され、その区分毎の売上高比率が表示されています。さらに、上場会社の決算報告書には、事業別の売上高等の内容が記載してありますし、会社案内等にも各事業内容が説明してあるのが普通です。

 このような会社の事業(製品・商品・サービス)の区分が「セグメント」であり、このセグメントが初回に述べたディスクロージャーと重要な関係を持ってきます。会社の決算、事業計画、予算、会社説明等においては、常にこの製品・商品・サービスの区分に基づき、具体的な数字が会社情報として株主や投資家に提供されるからです。


長期・継続的な使用が求められる「セグメント」

 それだけに、セグメントは会社の内容や特徴を正しく表現するものでなければなりません。セグメントは情報開示の基本です。社長が自社の事業の特徴や今後の展開を説明していても、それが会社のセグメントとは違っているようでは話しになりません。実際、こうした例をよく見かけます。

 では、具体的にどのようにしてセグメントを決定すればよいのでしょうか? 大区分としては、1)製品・商品・サービスの種類毎に区分する、2)提供する方法(販売の方法)により区分する、3)提供先(販売先の違い)により区分する・・・とか色々の区分表示の仕方があるでしょう。

 外食産業を例にとりましょう。同じ外食産業でも

和食・洋食・飲料等 メニューで区分したもの
店舗の看板(ブランド)で区分したもの
テイクアウト・イートイン等、販売の方法により区分したもの
直営店・FC店等、事業の違いにより区分したもの

・・・といったセグメントがあります。要は、投資家や株主に対し会社の特徴や内容を最も正確に伝えるセグメントが要請されるということです。

 セグメントは、大きな事業の変化が無い限り、長期間かつ継続的に使用されることが必要です。セグメントがコロコロ変わっているようでは、投資家や株主等は、会社のトレンドを読むことができないからです。

 また、セグメントの表現の仕方にも注意が必要です。セグメントは投資家や株主等にとって分かりやすいものでなければなりませんので、日本語によるか外国語の表現によるか等の判断も大事なことです。

 セグメントが決まったら、これを会計や予算にも反映しなければなりません。ここが大事なところです。会計的には、セグメントに基づいて売上高が正確に把握できることは当然ですが、それに原価が対応しなければなりません。これによってセグメント毎の利益が把握されるからです。そして、そのために会計システムの構築が必要となってきます。

 また、上場を目指す会社は、年間の予算(月次に配分)を立て、それに対し実績を把握・対比する予算管理、予算統制を実施することが必要ですが、予算項目の中には、「セグメント毎の売上高予算」、「セグメントごとの原価予算」および「セグメント毎の粗利益予算」がなければなりません。

 以上のように、セグメントに関する仕組みが出来上がれば、会社案内、会社の事業計画、今後の経営方針等多くのものがセグメントに沿って準備されることになります。それだけに、同業他社のセグメントをそのまま、何の疑いも無く自社のセグメントとして採用しているようでは、「この社長は本気で上場を考えているのだろうか?」と疑わざるを得ません。

 会社の特徴をどう投資家や株主に対して説明していくか・・・それは上場会社の使命なのです。

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