IPO虎の巻

 序の一 “上場会社の憲法”とは?
執筆:IPO総合研究所  森田弘昭

「株式上場」とは何か?

 「株式上場とは何か?」というと、ほとんどの上場の手引書には「証券取引所市場において売買取引の対象になること」とか、「株式会社がその発行する株式を一般大衆に開放して、誰でもその株式を自由に売買できるようにすること」といった説明が書いてあります。

 解説としては全くその通りですが、株式を上場するということには、こうした解説を超えた奥深い意味があります。この「上場の本当の意味」を十分に理解しておかないと、首尾よく上場を実現できたとしても、上場のメリットを受けるどころか、上場会社としての責任ばかりが重くのしかかり、何のために上場したのか「後悔先に立たず」ということになりかねません。

 では、手引書には書いていない「上場の本当の意味」とは一体何でしょうか?


上場会社の最大の責務は「ディスクロージャー」にあり

 上場を目指している会社の経営者に「株式を上場するにあたり何が最も重要だと思いますか?」と聞いてみると、ほとんどの経営者は「業績です」と答えます。確かに、新興市場においては上場申請会社の成長性が要求されますし、上場した後も、業績が好調に推移しなければ、上場したメリットを十分に享受することはできません。しかし、これから上場を目指す会社、これから上場準備に入ろうという会社は、業績よりも何よりも最も重要なことは「ディスクロージャー」であるということを強く認識いてほしいと思います。

 上場会社の業績が悪くなったからといって、すぐに経営者の責任が問われますか? あるいはそれをもって刑事事件となり、社長が逮捕されたでしょうか? そうではないでしょう。一方、最近の実例を見ればわかるように、決算を粉飾したり、株主数をごまかしたり、業績見通しが悪いのに良いように偽ったりした会社や経営者がどうなったでしょうか? 皆さんもよくご存知のはずです。

 つまり、上場会社にとっては「ディスクロージャー」すなわち「会社の重要な情報の正確でかつ迅速な開示」こそが、最も優先して要求されることになります。投資家は会社の提供する情報を投資判断のための材料として投資の決定を行うわけですから、当然のことでしょう。


上場審査のポイント

 上場の審査では、会社の提供する財務諸表が会社の決算および財政状態を正しく表していることを確認するために、監査法人による監査証明の添付が義務づけられています(上場後は、そのことが法律で定められています)。そして、その前提となる会社の会計システムや管理システムが正しく構築され、かつ運用されているかどうかは上場審査の大きなポイントとなります。

 また、会計的な面だけでなく、会社の事業計画、予算、予算の進捗状況、人事、組織の変更、他社との業務提携等、投資家の投資判断に影響を与えると考えられる事項についても迅速に開示するよう義務づけられており、そのための体制が出来ているかどうかもやはり上場審査のポイントになります。

 これから上場しようと考えている会社の経営者の皆さん。株式上場のためには、業績も大事です。しかし、それ以上に大事なのがディスクロージャーです。このことは“上場会社の憲法”として受け止めていただき、そのための社内の意識作り、体制作りに努力してください。それができれば、上場はもう目の前です。

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