ポスト金融円滑化法対策「銀行融資業務の実際」

2.担保・保証・実行後管理


(2)保証の管理

 業績低迷が続いており、長期運転資金の借り入れを検討しています。長年取引をしている甲信用金庫の担当者に相談してみましたが、現在の借入残高や担保の評価額を考えると、今までの条件での融資は厳しいとの回答がありました。経営者である私は保証人になっていますが、新たに資力のある人に保証人になってもらい借入することは可能でしょうか。また、銀行にける「保証」の扱いはどのようになっているのでしょうか。

 銀行で融資取引をする際には、融資先(=借主)以外の人(=社長)の一般財産を融資金の回収の保全として捉える(=人的担保)ことが一般的であり、「保証人」となるための契約を締結します。ただ、現在は、第三者の個人の保証を契約することは禁止されているため、社長以外の方に保証人になってもらうことを前提に融資の申し込みをするには問題があると思われます。「1.融資取引と実行 (4)融資契約の実務 参照」 銀行業務において「保証」に関する取扱い上で考えるべきポイントについては以下の3点です。

1)保証の種類
2)取得上の注意
3)保証要件の確認ポイント


【保証の種類】

 保証には、「個人保証」と「法人保証」があります。保証協会等「保証」を業とする法人の保証を「機関保証」ということもあります。

●個人保証

 会社への貸出に対しては、代表者である個人を保証人とすることが通例ですが、社長個人の責任感や連帯感を持っていただく意味合いもあります。保証契約に関しては個人を保護する意味合いから保証については制限を設けるケースが多くなっていますので、一般保証なのか連帯保証なのか扱いには注意が必要となります。

●法人保証

 会社の取引先である法人が保証人となるケースもあります。この場合、保証そのものが法人の目的の範囲内にあるのか否か、定款や登記簿謄本により保証行為を確認する必要がありますが、取締役会の承認を得ているか否かの確認(=取締役会議事録での確認)が重要となります。

 特に、取締役個人の借入債務を会社が保証したり、取締役が代表者となっている他の会社の借入債務を会社が保証する場合等は利益相反行為となる可能性がありますので注意が必要です。

●機関保証

 代表的なものとして「信用保証協会」による保証があります。銀行から融資を受ける際に、保証協会の信用力を担保に資金調達することとなりますが、この場合、保証協会が銀行に負担する保証債務に対して、経営者である社長が連帯保証するケースもあります。


【取扱い上の注意点】

 銀行が保証を申し受ける場合、通常の保証、連帯保証、根保証という3つの方法があります。また、担保として物件を提供していただく場合、債務者とは異なる第三者の物件の場合は物上保証という形で保証人となるケースもあります。

●通常の保証

 保証債務は、保証人と銀行との間の保証契約によって成立しますが、平成16年の民法改正により、保証契約には書面または電磁的記録が必要な=要式契約となっています。また、保証人は、行為能力者であり、弁済をする資力を有することが必要であるとされていますので、保証人が弁済の資力を失ったとき(破産等)は、債権者は代わりとなる保証人を立てるよう請求することができます。

 保証人には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」という権利がありますので、債務者が弁済できない場合は、直ぐに弁済を要請しても拒むことができるため注意が必要です。

催告の抗弁権
 保証人は、債権者から履行の請求をされた場合、まず主たる債務者に催告をするよう請求でき、主たる債務について一時的責任を負わされることで回避することができる。

検索の抗弁権
 保証人は主たる債務者が債務を(たとえ一部でも)履行できるだけの資力を有しており、かつ執行が容易であることを証明すれば、債権者からの請求を拒むことができる。

●連帯保証

 保証人が借主と連帯して借入金の債務を負担する保証を連帯保証といいますが、連帯保証には「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」がありません。

 また、連帯保証人に対して生じた一定の事由が主たる債務者に対しても効力が生じますし、保証人が数人いる場合でも、連帯保証の場合は分別の利益(=分担しあう)がなく、各自が債権全額について保証債務を負担することとなりますので、債権担保としては銀行側に有利な条件となります。

●根保証

 特定の債権に対する保証を行うケースが一般的ですが、法人の場合は継続して反復する取引となるため、保証も個々の取引ごとの保証では無く、継続取引から発生する一切の債務を包括的に保証する扱いとして「根保証」があります。

 ただし、平成17年の民法改正によって、個人である保証人の保護を図るために、貸金等根保証契約では、極度額を約定しない場合は無効とされ、5年以内の元本確定日を定めなければならず、定めなかった場合は3年となり、5年を超える確定日を定めた場合であっても3年となる等、扱いが変更になりました。根保証として契約する場合は、金額と期間の管理を徹底する必要があります。

●物上保証

 単に、担保として物件を提供しているだけ(=物上保証)であれば、主債務者が弁済できなくなった場合、担保として提供した財産を失うことはあっても、それ以上の弁済の責任を負うことはありません。銀行としては、単なる物上保証だけではなく、保証人として要請するケースもあります。


【保証要件の確認ポイント】

 保証契約については、銀行と保証人の合意で成立する諾成契約ですが、保証契約の成立を証するために「約定書・契約書・保証書」等に保証人の署名を徴することが原則です。

 保証人が対象とする債権に対して保証の意思があるのか確認することがまず重要であって、保証人が個人の場合は自署捺印とし印鑑証明書の提出を求め、法人の場合は登記簿謄本、印鑑証明書および取締役会議事録等の関係書類の提出を求めます。

 また、保証意思が確認できたとしても、保証人としての保証能力(=行為能力および返済能力の両面)が実際にあるのか否か確認することも重要となります。保証は「人的担保」であって、借主が万が一契約を履行することができず、借入金の返済ができない場合は、保証人に弁済してもらうことが前提となりますので、資力等については事前に把握しておくことが重要となります。

 また、貸出を実行した後は、借主の業況だけではなく、保証人の状況についても常に確認し、何等かの変動がある場合は、代替策を考える必要がありますので事後管理の徹底がポイントとなります。

信用保証協会の保証における確認ポイント

 保証契約は、信用保証協会が銀行に対して信用保証書を交付することによって成立し、保証契約の効力は、銀行が実際に貸出を行ったときに生じます。保証契約に基づく貸出は信用保証書の発行日から30日以内(特例で60日)に実行する必要があり、実行した後は「貸出実行報告書」の提出が必要とされています。

 つまり、信用保証書の発行日の管理を厳格に行うことが重要となります。