コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第107回 少ないコストでも顧客は呼び込める!
      不況期でも成功する販売促進の法則

■販売促進は本当に効力を失ったのか?

 前回の私の記事では、営業戦略について述べましたが、今回は現在の時流に即した、売上に直結する「販売促進」にフォーカスして話をすすめていきます。

前回の私の記事

 現在、日本の景気はやや回復してきたかに見えます。しかし、これは好調な輸出に支えられたものであり、その回復してきた輸出に関しても、リーマンショック以前の7〜8割程度といった状態です。また、国内消費もやっと底を打った感が出ていますが、デフレの圧力はまだ高く、「客数は戻ってきたが売上の伸びがまだ見込めない状況」といえるでしょう。つまり、国内はまだ不景気の流れにあると考えて行動した方がよいようです。

 では、このような環境下でも成功する販売促進法とはどんなものなのでしょうか。

 まず、前提として覚えておいていただきたいのは、販売促進の方法は、好景気と不景気で大きく考え方が変わるということです。

 近年、小売やサービス業の現場で「販売促進の効力が落ちている」という言葉をよく耳にします。確かに、不況の影響による売上減少に伴い、経費削減のために販売促進料を削減している企業が目立ちます。販促料が少なくなるため、顧客の集客力はダウンし、現場の活気がなくなる影響で、さらに売上が減少してしまうという『悪のスパイラル』に入ってしまっている企業も多いようです。

 ただし、ここで誤解してはいけないのが、販促料を減らされたからといって「販売促進の効力が無くなった」訳ではないということです。販売促進には、“タイミング”と“ターゲット”の問題が深く関係しています。このことを理解した上での施策が非常に重要です。


■カギは時期の「ピンポイント化」と現場への権限委譲

 まず、重要視すべきは販売促進の“タイミング(時期)”です。下図を見てください。好景気は、物が売れる時期が比較的長く続きます。そこで、そのタイミングに合わせて、何度も販促を実施し、それなりに効果も見込めます。

 しかし、不景気においては、不必要なものは買わない、必要な時にしか買わないという行動が顕著に表れます。そのため、需要期の山が短く急になるため、販売促進のタイミングを誤ると、効果がほとんど見込めなくなります。

■販売促進のタイミング

 この傾向をつかむのに分かり易い例が「早割り」です。好景気には「早割り」の効果が高く、早めに予約しておこう、早めに買っておこうという意欲が消費者に出ます。しかし、不景気は直前での購買行動となるため、早割り効果はあまり見込めなくなります。旅館やホテルにおける我々のご支援先でも、数年前は1ヵ月前までに予約が入っていたのが、現在では、1週間前、さらには当日といった予約が激増しています。この傾向は、去年のGWと比べても直前予約が増加していることでもみてとれます。

 そのため、リアルタイムに販促ができるWEBや携帯における販促戦略の重要性は、益々高まってくるでしょう。

 とにかく、この「時期のピンポイント化」により、販促のタイミングをはかることが重要ですが、昨年のデータはあまりあてになりません。では、どうすればよいのでしょうか。

 これからは「現場社員の感覚」が重要になってきます。日々、現場に触れている社員が感覚を磨き、それに基づいて素早い対応ができる体質づくりをしていないところは、時期を逃してしまいます。つまり、販売促進の権限を現場に委譲していくことが成功の鍵となるのです。


■ターゲット顧客のピンポイント化と精神欲に訴える販促

 タイミングのピンポイント化と同時に、販促手法で見逃せないのが「ターゲットのピンポイント化」です。このターゲットのピンポイント化とは、販促をかける顧客を絞り込むことを指します。

 例として、靴小売業の販売促進成功事例を挙げてみましょう。最近、当社の顧問先で販促が成功したチラシに「高齢者向けウォーキングシューズ特集」があります。これまで、単純な靴の安売りチラシは、あまり大きな効果が出ていませんでした。しかし、このチラシのようにターゲットを「高齢者」に絞込み、「ウォーキングシューズ」を前面に打ち出す企画販促をしたところ、業績は大きく伸びました。

 販促を実施する者としては、ターゲットを絞るということを非常にもったいないと感じてしまうかもしれません。同じお金をかけて販売促進を実施するのであれば、より多くの人を対象にしたいと思うのはわからないでもありません。しかし、これこそが販促を成功させづらくしている大きな理由の1つなのです。

 この「ターゲットのピンポイント化」は、現在の不景気と実は別の時流に関係しています。現在は、モノあまりの時代であり、多くの人が必要最低限のモノをすでに持っている状態といえます。そのため、消費意欲は減退しています。

 我々船井総研では、現在における日本の消費が「物欲⇒精神欲」に変わった、と理解しています。精神欲とは、個人個人によって大きく異なります。「幸せになりたい」「彼女がほしい」「お金持ちになりたい」「長生きしたい」「健康になりたい」「夫婦仲良くすごしたい」などなど、挙げるときりがありません。しかし、この“精神欲”にポイントを合せることにより、同じものでも売上が大きく変わってきます。先のウォーキングは「健康に長生きしたい」と望んでいる元気な高齢者をターゲットにしたものです。単純な靴を売るのでなく、そこに精神欲的情報を付加するのです。

 この靴の事例以外にも、船井総研では、多くの成功事例があります。例えばアパレルにおける「お財布」の販促です。「お金持ちになるご利益があると有名な○○神社のご祈祷をうけたお財布」(実際にご祈祷をうけにいった写真も載せます)と銘打ち、販売すると劇的に販売数が伸びました。これも“お金持ちになりたい”という精神欲に訴えかけた販促です。

 このように対象者を絞り込み、その精神的ニーズにあった商品や販促企画をすると、物あまりの現在でも効果は大きいものになります。


■「やっぱり○○がいい」とお客様に思わせる固定客化策の実施

 最後に「固定客化」について述べておきます。前回の営業戦略の記事で述べたように、現在、顧客の流動化が起きています。そのため、既存顧客には、徹底した固定客化を図らなければなりません。その際、これまでの顧客管理、例えば「顧客ランクを分けてA客に○○の特典を与えよう」といった顧客管理販促は重要ですが、それだけでは、顧客の流動化に対抗できません。

前回の営業戦略の記事

 船井総研では、“親身法(しんみほう)”の重要性を最近、強く打ち出すようになりました。この“親身法”とは、当社の創業者である船井幸雄が言い続けてきた究極の固定客化策です。つまり、お客様1人ひとりに自分の子供(子供がいない人は、親兄弟)のような気持ちで接することを指します。つまり、本気でお客様のことを考えて、対応するということです。この対応ができると「やっぱり、私はこの○○という店(会社)がいい」となり、顧客離れはなくなります。

 これを実施するには、現場の社員力が重要となります。現場を良く見て、顧客のニーズを早期に察知し、こちらから早目、早目に仕掛け・提案を行なうことが必要です。そして、目の前のお客様に全力投球し、お客様を逃してはなりません。現場の執念が試されるときです。徹底した顧客の固定客化は、最重要戦略の1つとしてぜひ取り組んでください。