コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第12回 TOC(制約条件の理論)の思考プロセス

 こんにちは、船井総合研究所の小林昇太郎です。

 前回、BSC(バランス・スコアカード)を進めていく上で、TOC(制約条件の理論)の思考プロセスを活用していくことが効果的であることに触れました。

 BSCを活用していく際に多くの企業で課題となることがあります。それは、BSCの戦略マップで考察をした各視点における戦略目標を定量的な評価指標に落とし込む際、何がこれらの戦略目標を達成していく上で有効な評価指標となり得るのか、それを実現していくアクションプランを具体的にどう策定していけば良いのかということです。

 その課題を解決し、「戦略策定」と「現場における実行」を双方向につなぐ手段の一つとして、TOCの思考プロセスが有効なツールになり得ると考えました。

 TOCの思考プロセスでは、企業やその現場において解決したいテーマがある場合、現状においてその解決を阻害していると思われる複数の問題の因果関係から問題構造を整理していく中で、解決したいテーマの達成を阻害している中核的問題を明確にすることが可能となります。

 そして、その中核的な問題がこれまでなぜ解決されなかったのか、その背景を従来のような部分最適ではなく全体最適な視点から明らかにし、中核的問題に対する具体的な解決策を考察、その解決策が問題構造全体に対してどこまで効果があるのかを検証していきます。

 さらにその解決策の実行を妨げるであろう障害の洗い出しと、その障害に対しての解決策を因果関係の中で論理的に導き出していくことで、より実現性の高いアクションプランまでを策定することができるフレームワークです。

 但し、TOCの思考プロセスについては、企業戦略や事業戦略の策定に活用する場合、組織階層間において上位層から下位層へ戦略目標をカスケーディングしていく際に解決していくべき課題があると考え、思考プロセスのフレームワークをそのまま活用するのではなく、BSC策定と運用のフェーズにあわせてカスタマイズを行ない、以下3つの戦略策定・実行フェーズにおいて組み入れるようにしています。

1.戦略マップにおける戦略目標策定及び各戦略目標間の妥当性検証フェーズ
2.戦略目標からスコアカードへの評価指標(KPI)策定フェーズ
3.評価指標を達成していくための具体的アクションプラン策定フェーズ

 そして、このTOCの思考プロセスをBSCとあわせて活用していくことで、戦略と施策の策定フェーズ、及び施策の実行フェーズそれぞれにおいて現場の理解と納得、あるいは共感を得ることにつながり、戦略の策定メンバーが、より一層に十分なコミュニケーションを図りながら全体最適の視点から戦略を策定していくことが可能となり、現場における戦略の実行力をも高めることにつながっていきます。

 これまでも実際の現場において、BSC及び思考プロセスのフレームワークを活用していくことで、関わるメンバーの理解、納得度合いが高い戦略策定が可能になりました。

 但し、ここで注意すべきことは、戦略マップにおける各戦略目標とスコアカードにおける評価指標は、戦略策定時においてたとえ論理的に因果関係の中で導き出されたものであっても、評価指標が戦略目標の達成に有効であるかどうかはあくまで仮説の上に成り立っていることです。

 従って戦略を実行する際、定期的なプロセス管理の中でこの仮説を検証し、改善すべき点は修正していくことが運用面において重要であることを戦略策定の段階からメンバーが理解していくことが必要となります。

 また、戦略マップ、スコアカードの策定後は、モニタリングの実施やスコアカードの評価指標を達成していくための課題など、解決していくべきテーマに基づき複数の分科会等を立ち上げ、定期的なワークショップの実施などプロセス管理に基づく一連の活動を継続的に行なっていくことで、策定された戦略の着実な実行へ向けた歯車を回すことができるようになるのです。