コンサルティング情報 〜戦略コンサルティングレポート

第6回 戦略策定に必要な現状分析

 こんにちは、船井総合研究所の小林昇太郎です。

 前回、「戦略策定」と、策定した戦略の「実行」「定着」を進めていく上で必要な3つの成功要因をBSC(バランススコアカード)の手法をからめて説明させて頂きました。

 その際、3つの成功要因として以下をあげさせて頂きましたが覚えていらっしゃるでしょうか。

 成功要因1「一連の取組みに対する、経営者・幹部の強いコミットメント」
 成功要因2「部門間、部門内における十分なコミュニケーション」
 成功要因3「戦略策定と運用に必要な知識や手法の習得」


 今回は、「成功要因3:戦略策定と運用に必要な知識や手法の習得」の中の、特に最初のフェーズである戦略策定を行う際に必要な現状分析をどういった視点から、具体的にどう進めていけば良いのか、一つの進め方の例をご紹介させて頂きます。

 戦略を策定する際、必ず避けて通れないのが現状分析です。

 この現状分析は、みなさんの企業が継続的に成果を上げていくために、市場や顧客が抱える、顕在化、潜在化したニーズを的確に把握し、そのニーズに自社が応えていくために、どういった価値(製品やサービス)をどのような手段や仕組を通して提供していく必要があるのかを明確にしていくための前提として極めて重要なフェーズです。

 現状分析を行う手段としては、市場規模や市場の成長性、顧客特性、競合分析、業界構造、自社分析といった切り口から抜け漏れなく現状を分析していくことが必要ですが、最近では、3C、5フォース、SWOTといった現状分析を行う際のフレームワークが様々な書籍等にも紹介されています。

 確かに、現状分析を行う際、これらフレームワークを使うことで、見るべき視点において抜け漏れはなくなりますが、多くの場合、単にフレームワークを使っての情報の整理に終始し、そこから先は思考が停止、有効な戦略を導き出すことができないといったことがよく見られるケースです。

 3C(市場、競合、自社)分析においても、単にそれぞれのフレームワークを個々に埋めていくだけではなく、それぞれのフレームワークを有機的に結びつけながら現状分析を進め、次の戦略策定のフェーズにおいてはその結果を踏まえ、その分析結果をどう判断し、行動していくことが望ましのかを導き出していくことが必要となります。

 例えば、市場や顧客の規模、成長性、収益性から、競合はそれをどう判断、行動しているのか、それを踏まえて自社の強み、弱みは何かを抽出していくといった具合に現状分析を進めていくわけです。

 故に、現状分析においては、それを行いながら「だから何?」を繰り返し、自社にとって優位なポジションを導き出していくための仮説を持つことが必要となっていくのです。

 加えて、現状分析の際に重視して頂きたいのが以下の2点です。

1)徹底的に顧客の視点から、顕在化、潜在化した市場の需要を考え抜く
2)自社が市場の需要に応えていく上での中核的、根本的阻害要因を見極める


 上記2点については、当たり前のようにも聞こえますが、実際の現状分析の際に、本当にこれらが明確に導き出されていることは稀です。

 限られた時間の中で、的確に顧客のニーズ(顕在・潜在)を見極め、そのニーズに応えるべく、自社において必要となる仕組みと、現状においてその実現を阻害し、短期、中期的に解決していかなければならない中核的、根本的問題を導き出していくためには、ある一定の知識とスキルが必要となります。

 例えば、「顧客が本当に頭を悩ませていることは何か」といったことを「顧客の視点」や「顧客の顧客の視点」にまで自らを置きながら深く洞察し、「それは顧客の中の何が原因で引き起こされているのか」「その原因に対して我々が提供できる、新たに提供するべき価値は何か」「それを実現するために自社内においてどういった仕組、スキルが必要か」「その実現を阻害している問題は何か」「その中で最優先に改善すべき問題は何か」といったようなプロセスでそれぞれの因果関係と打ち手を明確にしていきながら現状分析を行います。

 これを実現していくためには、単なる表層的な問題を因果関係で結び付けただけでは導き出せません。

 例えば、それぞれの現象面において、それらを引き起こしている背景といった部分にまで深く踏み込んでいかなければ本質的な問題解決にはつながらないのです。

 この進め方は私がクライアントの現場でよく使うやり方ですが、これを正しい順序で的確に進めていく手法として、TOC(制約条件の理論)の思考プロセスなども効果的であると考えます。

 一連の現状分析の中で、徹底的に自らを顧客の視点に立たせ、現状を分析、洞察していくことは、戦略を導き出す際、数ある戦略目標となり得る選択肢から、あなたが何を選択し、これまで行ってきた何を止めるべきといったことを判断していく上でも有用な手段となり得るでしょう。