目次 Q1


税務調査が行われる理由


Q1  赤字法人の調査……赤字なのになぜ税務調査が入るのか

 業界全体の景気が回復し、当法人も業績が向上したのですが、銀行が勧めたデリバティブに手を出し、前年度は大赤字の決算となり、欠損の繰戻還付請求を行いました。それでも税務調査があるとのことですが、なぜでしょうか。


Point

 [1] 赤字法人を調査しても効率がよくない…
 [2] 赤字でも税務調査は行われることがある…
 [3] 赤字に仮装したことが発覚したときは重税が…
 [4] 税目別の還付についての検討はどうか…



当面の対応

1 繰戻しの調査
 税務調査は、赤字法人については原則的に行われません。しかしながら、たとえば法人が欠損繰戻の還付申請等を行えば、この場合には原則として欠損の確認のための調査が行われることがあります。

2 更生の決定
 この税務調査によって、赤字申告をしていた年度が黒字決算となり、逆に多額の更正決定を受け、繰戻申請がとんだ「ヤブヘビ」となり、かえって税負担が多くなってしまった例もあります。

3 損益の帰属
 不当な決算操作を行った場合は別として、業績のよい年度の場合には、わずか1日で、売上げの期ズレ、デリバティブの損失、事故・災害損益、役員退職金による赤字、黒字等が決算操作により決定されますので、原始証憑の日付を十分に確認して、ミスのないようにすべきです。

4 適用要件
 すなわち、欠損の繰戻還付は、前1年以内に法人税を納付していることが適用要件ですから、黒字年度の次の年度が1年以内に赤字年度とならない限り、税法の定める繰戻還付は適用外となります。なお、その後に赤字年度となれば、欠損金は7年間利益が計上されても相殺が可能な繰越控除制度の規定を適用することとなります。平成23年度税制改正案では、上記の期間が7年から9年に延長されています。

5 赤字の仮装
 黒字でありながら、税務調査をのがれるために赤字法人に仮装して税務申告を行ったものの、その意向が税務当局に察知されて税務調査を受け、多額の税務否認を受けた場合には、その更正税額と同時に重加算税が併課され、さらには青色申告の取消しにまで至ってしまうこともあり得ます。


今後の対応

1 赤字の調査
 法人が赤字であれば、原則的に税務調査は行われないのですが、上記の欠損繰戻の調査以外にも、以下の場合には赤字法人の税務調査が行われます。

 税目別のケース
 
(1)

  法人税
 赤字法人でも「黒い赤字法人」、つまり、本来は黒字なのに偽装して赤字申告をすれば税務調査はないと判断した法人、不法の不当行為をした法人等につき、調査依頼の通報・投書等があった場合には、その確認のため、税務調査を行うことがあるようです。

  (2)  源泉税
 赤字法人であっても、給与、報酬、料金等にかかる源泉所得税の課税、納付につき、通常5年程度の調査がかなりきびしく行われます。

  (3)  消費税
 赤字法人であっても、消費税の仮受・仮払処理、納付、還付等についての調査が、法人税、所得税の調査と併行して行われます。なお、不当還付の場合の税務の取扱いは、一般調査と比較してかなりシビアです。

  (4)  印紙税
 最近、印紙税についての調査はめったに行われませんが、必要であれば赤字法人でも調査が行われます。この調査の対象書類は、通常、膨大となりますので、一定期間の印紙貼付け漏れをサンプルとして抽出し、かつそれにより全体を推計する便法が使われることもあります。

 

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