目次 第2部 第1章 Q15


Q15 寄附金控除の適用による還付

 先般の台風で出身地の県が水害による被害を受けました。この水害に係る義援金として日本赤十字社を通して5万円を寄附しましたので、確定申告で寄附金控除による還付を受けようと思います。

 なお、私は理化学機器の商社に勤務する会社員で、給与の他に収入はありません。


Answer


 寄附金のうち、特定寄附金を支出した場合には、その支出した金額のうち2,000円を超える部分は所得から控除することができ、これを「寄附金控除」といいます。寄附金控除の対象となる特定寄附金は、国または地方公共団体に対するもののほか法令で限定列挙されています。なお、寄附金のうち政治活動に関する一定のものや認定NPO法人に対するものおよび公益財団法人等に対するものは、税額控除を選択することもできます。

 ご質問のケースでは、日本赤十字社に対する寄附金は特定寄附金として寄附金控除の対象です。確定申告において支出した5万円から2,000円を差し引いた4万8,000円について所得控除することで還付を受けられます(総所得金額の40%を限度とします)。なお、寄附金控除を受けるための申告については、支出先からの領収書の添付が必要です。


1 特定寄附金の範囲

 寄附金控除の対象となる「特定寄附金」とは次のものをいいます。

特定寄附金の種別 申告の添付書類
国、地方公共団体に対する寄附金(所法78丸数字2 領収書
公益社団法人、公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち、財務大臣が指定したもの(所法78丸数字2 領収書
特定公益信託のうち、その目的が教育または科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する一定のものの信託財産とするために支出した金銭(所法78丸数字3、所令217の2) 領収書、特定公益信託であることの認定書の写し
次に掲げる科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与する法人(特定公益増進法人)の主たる目的である業務に関連する寄附金(所法78丸数字2、所令217丸数字1 領収書
および
 
 独立行政法人
 地方独立行政法人のうち一定のもの
 自動車安全運転センター、日本司法支援センター、日本私立学校振興・共済事業団および日本赤十字社
 公益社団法人および公益財団法人
 民法第34条の規定により設立された法人のうち一定のものおよび科学技術の研究などを行う特定法人
 私立学校法第3条に規定する学校法人で学校の設置もしくは学校および専修学校もしくは各種学校の設置を主たる目的とするものまたは私立学校法第64条第4項の規定により設立された法人で専修学校もしくは各種学校の設置を主たる目的とするもの(学校の入学に関してするものは含まれません)
 社会福祉法人
 更生保護法人

ロについては、地方独立行政法人法第6条第3項に規定する設立団体のその旨を証する書類の写しとして交付を受けたもの

ホおよびへについては、特定公益増進法人である旨の証明書の写し
政治活動に関する寄附金のうち一定のもの(後述)(措法41の18丸数字1  
  選挙管理委員会等の確認印のある「寄附金(税額)控除のための書類」
(注)  確定申告書を提出するときまでに、「寄附金(税額)控除のための書類」が間に合わない場合は、「寄附金の領収書(写)」を添付して申告し、後日「寄附金(税額)控除のための書類」の送付を受けた後、速やかに税務署に提出します。
認定特定非営利法人(いわゆる認定NPO法人)に対する寄附金で活動事業に関連するもの(措法41の18の2) 領収書
特定新規中小会社により発行される特定新規株式を払込みにより取得した場合の特定新規株式の取得に要した金額のうち一定の金額(1,000万円を限度とします)(措法41の19) 領収証
および以下の書類
 
 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の寄附金控除額の計算明細書
 特定新規中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除明細書
 経済産業大臣が発行した特定新規中小会社に該当するものであること等の一定の事実の確認書
 特定新規中小会社が発行した個人投資家が一定の同族株主等に該当しない旨の確認書
 特定新規中小会社から交付を受けた株式異動状況明細書
 投資契約書の写し
特定地域雇用等促進法人に対する寄附金のうち、一定のもの(平成25年11月30日までに支出するものに限ります)(旧措法41の18の2)  
 
 特定地域雇用等促進法人に該当する旨を証する書類の写し
 寄附をした者が、寄附をした日において認定地域再生計画に定められた区域内に住所を有する場合には住民票の写し、または勤務先の所在地がある場合には在職証明書、事業所で事業を営んでいる場合には事業申述書


2 寄附金控除(所得控除)

 寄附金控除により、所得から控除できる金額は次のとおりです。

(1)控除額

寄附金控除額=次のいずれか低い金額−2,000円
 (1)その年に支出した特定寄附金の額の合計額
 (2)その年の総所得金額等※×40%
 「総所得金額等」とは純損失、雑損失、その他各種損失の繰越控除額後の総所得金額、特別控除前の分離課税の長(短)期譲渡所得の金額、株式等に係る譲渡所得等の金額、上場株式等に係る配当所得の金額、先物取引に係る雑所得等の金額、山林所得金額および退職所得金額の合計額をいいます。

(2)手続き

 寄附金控除を受けるためには、寄附金控除に関する事項を記載した確定申告書にの表に示した書類を添付する必要があります。電子申告の場合は、その記載内容を入力して送信することにより証明書の添付を省略することができます。


3 税額控除

(1)政治活動に関する寄附の場合の税額控除

 個人が平成7年1月1日から平成26年12月31日までに支払った次に掲げる寄附金は、所得控除として寄附金控除を受けるか、または次の算式で計算した金額の税額控除を受けるかのいずれかを有利選択することができます(措法41の18)。

寄附金控除の対象となる政党等に対する寄附金  
 政治資金規正法第3条第2項に規定する政党および政治資金規正法第5条第1項第二号に規定する政治資金団体に対する政治活動に関する寄附で、同法に規定する報告書により報告されたものをいい、同法の規定に違反するものおよびその寄附をした人に特別の利益が及ぶと認められるものは除かれます。
税額控除の算式  
その年中に支払った
政党に対する寄附金
の額の合計額※1

  − 2,000円
※2
 × 30% =  政党等寄附金特別控除額
 (100円未満切捨)
 ※3

 ※1  その年分の総所得金額等の40%相当額を限度とします。ただし、他に特定寄附金の額がある場合には、総所得金額等の40%相当額から、その特定寄附金の金額を控除した残額が限度となります。
 ※2  「2,000円」については、他に特定寄附金の額がある場合には2,000円からその特定寄附金の額の合計額を控除した残額です。
 ※3  その年分の所得税額の25%相当額を限度とします((2)の認定NPO法人または公益社団法人等に対する寄附金の税額控除とは別枠です)。

(2)認定NPO法人または公益社団法人等に対する寄附の税額控除

 個人が支払った次に掲げる寄附金は、所得控除として寄附金控除を受けるか、または次の算式で計算した金額の税額控除を受けるかのいずれかを有利選択することができます(措法41の18の2、41の18の3)。

税額控除の対象となる寄附金  
(1)  認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)に対して支出した事業に関連する寄附
(2)  特定寄附金のうち、次に掲げる法人(その運営組織および事業活動が適正であることならびに市民から支援を受けていることにつき一定の要件を満たすものに限る)に対する寄附
(a) 公益社団法人および公益財団法人
(b) 学校法人等
(c) 社会福祉法人
(d) 更生保護法人
税額控除の算式  
(1) 認定特定非営利活動法人に対する寄附
〔(1)の寄附金 2,000円 〕×40%= 特別控除額(100円未満切捨)
※1   ※2   ※3

(2) 公益社団法人等に対する寄附
〔(2)の寄附金 2,000円 〕×40%= 特別控除額(100円未満切捨)
※1   ※2   ※3

 ※1  その年分の総所得金額等の40%相当額を限度とします。ただし、他に特定寄附金の額がある場合には、総所得金額等の40%相当額から、その特定寄附金の金額を控除した残額が限度となります。
 ※2  「2,000円」については、他に特定寄附金の額がある場合には2,000円からその特定寄附金の額の合計額を控除した残額です。
 ※3  (1)と(2)の特別控除額を合わせて、その年分の所得税額の25%相当額を限度とします((1)の政治活動に関する寄附金の税額控除とは別枠です)。

(3)手続き

 税額控除の規定は、確定申告書に控除を受ける金額についての記載があり、かつ、計算に関する明細書およびの表に示した書類を添付する必要があります。


4 ふるさと納税制度

 「ふるさと納税制度」とは、自らが選んだ都道府県・市区町村といった地方公共団体に対して寄附金を支出した場合に所得税の寄附金控除の対象となるほか、翌年度の住民税から一定の金額が控除される制度で、支出した寄附金のうち5,000円を超える金額相当額が概ね所得税の所得控除と住民税の税額控除により軽減されます。なお、ふるさと納税の手続きは、確定申告の際に寄附金控除の手続きと同時に行うことができます。

 

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