目次 II-10


10 どこまでが交際費の範囲となるか(3)

営業補償金を支払った場合
 L社は、今度M市に新たに大規模店舗を出店しますが、地元商店街の反対にあいました。そこで、新店舗進出にともなう地元商店街の売上減少分を填補するために営業補償金として500万円を地元商店街に支払うことで和解が成立しました。
 L社は、この支出を販売促進費として処理しています。

調査官の指摘
 商店街の売上減少に伴う営業補償金の支払いは、地元商店街の反対を押さえるための工作費と認められ、交際費として処理すべきものです。

会社の言い分
 500万円の支払いは、新店舗をオープンさせる上でどうしても必要な費用であり、また、その額も専門のコンサルタントに合理的に算出してもらったものです。さらに相手方も、きちんと収益に計上しているはずです。



税務判断のポイント

 調査官の指摘どおり、500万円は交際費として処理すべきです。

 補償金、解決金等の支出がある場合、調査においては、その支出が交際費に該当するかどうかが、問題となります。
 L社と地元商店街とは、本来、自由な競争をすべき関係にあります。したがって、本事例のような営業補償金は、必ず支払わなくてはならない性格のものではなく、ビルの建設による日照妨害、電波障害等に対して支払われる損害賠償金的な補償金とは内容が異なります。
 本事例のような営業補償金は、地元商店街に金銭を与えることにより、反対を押さえるという一種のわいろ的な性格を持ち、交際費に該当すると税務上解釈されています。
 なお、本事例とよく似たケースとして、新店舗開設に当たって市町村等に対し、公共整備負担金等を支払わなければならない場合があります。
 しかし、この負担金については、店舗開設に際しての条件としてあらかじめ約束されているものであり、相手方も市町村等であって公共性の高いものであるという理由から、交際費には該当しないものとされています。

税理士のアドバイス

 補償金、解決金等を支払う場合、支出する理由、算定根拠等をよく確認して交際費にならないかどうかを判断すべきです。
 また、受け取った側が、補償金等を、収益に計上しているとか、個人で確定申告しているとかいうことは、交際費に該当するか否かの判断基準には必ずしもなりませんのでご注意ください。

【参考法令】  措通61の4(1)−15(8)(交際費等に含まれる費用の例示)

 

目次 次ページ