目次 II-6


6 接待等の相手方の範囲はどこまでか(1)

従業員を慰労した場合
 H社の社長は営業畑出身ということもあり、営業社員に対する面倒見がよく、ときどき成績優秀な社員や大口の取引をまとめた社員などを3〜4人引き連れ、盛り場の高級クラブで慰労会を行っています。
 当期においても、そのような慰労会が度々行われ、年間250万円の費用がかかりましたが、営業社員の士気高揚の費用と思えば安いものです。
 H社は、この慰労会の費用250万円を従業員に対する福利厚生費として処理しています。

調査官の指摘
 この慰労会に係る費用は、社内の特定の社員を対象としたものであり、開催場所から判断しても交際費に該当するものです。

会社の言い分
 開催場所は、確かに高級クラブですが、得意先を接待したわけでもなく、当社の社員を慰労のため連れていったのですから福利厚生費に該当します。



税務判断のポイント

 調査官の指摘どおり、慰労会の費用250万円は交際費として処理すべきです。

 交際費において、接待等の相手方の範囲はどこまでかということが問題となった事例です。
 普通、接待等の相手方というと、社外の得意先や仕入先がイメージされます。しかし、税法上、交際費における接待等の相手方はそれよりも範囲がずっと広くなります。得意先や仕入先等の取引に直接関係のある者はもとより、間接的に法人の利害に関係あるものや会社の役員、従業員、株主等もその範囲に含まれます。
 本事例の場合、特定の従業員を相手に高級クラブで慰労会を実施しており、通常の福利厚生活動のように、全社員一律で、かつ社会通念上一般的に行われているものとはほど遠いものです。したがって、従業員を相手に接待を行ったとされ、交際費課税を受けたものです。

税理士のアドバイス

 交際費の場合、接待等の相手方の範囲が通常のイメージより広く、会社の役員、従業員、株主、地域住民等もその範囲に含まれる場合があるということに留意しておく必要があります。

【参考法令】  措通61の4(1)−22(交際費等の支出の相手方の範囲)

 

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