目次 II-5-Q3


Q3 預貯金等に関する総合的な観点(家族名義預金、
相続財産全体のバランス等)に基づく確認方法

Question
Q1及びQ2以外で、預貯金等に関する総合的な観点(家族名義預金、相続財産全体のバランス等)に基づく確認方法について説明してください。
 


Answer

 被相続人に係る家族構成、家族の年齢、職業、年収及び保有資産の状況等を総合的に勘案して、家族名義で開設されている預貯金等の実質の所有者を確定させているか等の確認が必要となりますが、詳細については【解 説】のチェックリストを参照してください。

【解 説】

預貯金等に関する総合的な観点に基づく確認事項一覧表 確認
下記に掲げるような判断基準から勘案して、家族名義預金等の実質所有者の確認が行われているか。
 (1)  家族構成、家族の年齢、職業、年収及び保有資産の状況
 (2)  通帳・印鑑、カード等の保管状況
 (3)  利息等の受取方法
 (4)  銀行等に対する満期等のお知らせの不通知処理の有無
 (5)  通帳に使用されている印鑑の状況(印鑑の数、利用頻度等)
 (6)  各預金の資金源泉の追跡(元始資金の発生状況)
 
相続開始前5年(大口の相続申告である場合には10年)位の間の被相続人の金融資産(預貯金・株式・公社債等)の動き(入金、出金)、代替資産への化体等の確認は適正に把握できたか。(下記に掲げるような金融資産異動一覧表を作成して確認すると便利です。)

参考資料:金融資産異動一覧表 (単位:千円)


上表を分析して、次のような税務処理の必要性について検討することになります。
 (1)  場合によっては、他人名義資産を被相続人の資産として申告することが必要になるのではないか。
 (2)  場合によっては、『贈与税の期限後申告』をすることが必要となるのではないか。
 
被相続人の死因が、例えば『慢性疾患』である場合のように相続開始時までの期間が比較的長かったと認められるケースでは、上記2と関連して、特に、家族名義預金や架空名義預金の形成又は無記名式の割引債券のような不表現資産への化体が行われていたのではないかと想定される度合いが事故死のような急死のケースと比較して高いものと考えられるが、この点についても確認したか。  
被相続人の生前の所得税の申告状況等から判断して、預貯金の申告額は適正水準の範囲内にあるものと考えてよいか。(この判断に際しては、被相続人の他の財産の形成との関連も含めて総合的に勘案するものであることに留意する。)
 実務上では、次に掲げるような損益法から導き出す財産状態の確認表を作成して、預貯金の申告水準が適正性を判断することも1つの方法であると考えられます。

参考資料:損益法から導き出す財産状態の確認表
 
上記4から判断して、被相続人の生前の所得税の申告状況からみて、預貯金等の申告水準が適切でない(少なすぎる又は多すぎる)と考えられる場合、その原因を分析して、適切な税務上の処理をしたか。
 (1) 少なすぎると考えられる場合
  (a) 家族名義預金や架空名義預金は存在しないかの確認
  (b) 割引債券等を代表例とする不表現資産の取得がないか否かの確認
  (c) 相続人等に生前贈与がなされていないか否かの確認
 (2) 多すぎると考えられる場合
  (a) 生前の所得申告の一部が申告もれになっているのではないかの確認
  (b) 他者に本来的には帰属するべき預貯金等について、被相続人名義で預入れがなされたもの(名義貸)ではないのかの確認
 

 

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