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3 不動産登記

 不動産登記制度は、不動産登記法で定められています。不動産登記とは、不動産の現況とその不動産に関する権利変動のすべてを登記簿に公示する制度のことをいいます。

 不動産登記法は、財産である不動産をどのように公示するか等不動産登記制度について詳細に定めています。

 不動産登記に関しては、司法書士や土地家屋調査士が専門家です。


(1) 不動産登記の効力

[1] 対抗力

 「対抗力」とは、当事者間で有効に成立した権利関係を第三者に主張できる法的効力のことをいいます。不動産に関する物件の得喪及び変更は、不動産登記法の定めるところに従って登記をしなければ、これをもって第三者に対抗することができません。つまり、「この不動産は、私のものです。」ということを第三者に主張するためには、不動産登記法に従って登記申請をする必要があります。

 不動産の権利を取得した者は、速やかに登記をする必要があります。対抗力が、不動産登記制度において、一番重要な効力なのです。


[2] 権利推定力

 「権利推定力」とは、登記されていれば、その登記に記載されているとおりの実体的権利関係が真実存在するという推定を生じさせる効力のことをいいます。この権利推定力は、その登記が真実ではないと主張する者が反証することにより覆される可能性はありますが、登記を信頼し、取引に入った第三者には、過失がないものと推定されます。


[3] 形式的確定力

 「形式的確定力」とは、一度登記がされてしまうと、その登記が有効か無効かにかかわらず、そのなされた登記を無視して、その後の登記手続きをすることができない効力のことをいいます。つまり、無効な登記がなされている場合であっても、その無効な登記の抹消等をしなければ、真実の権利者は自らの権利の登記をすることができません。


[4] 公信力

 不動産登記には、公信力はないとされています。公信力とは、登記を信頼して新たに取引に入った者は、必ず保護される効力のことをいいますが、日本の不動産登記には、この公信力が認められていません。すなわち、虚偽の登記がなされている場合に、その虚偽の登記を信頼して新たに取引に入った者は、その登記が虚偽であると立証されたときには、自己の権利を失います。

 不動産登記に公信力が認められていないことから、不動産登記の信頼性は低いとも考えることができますが、民法94条2項に基づく通謀虚偽表示や、民法110条に基づく表見代理の制度などにより、結果的に登記に公信力を認めたことと同様の効果を与える取扱いが、実務上ではなされています。

 

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