目次 事例2


事例2 突然遺産分割を要求されたケース

 Bさんの父親は、戦前より大阪市内の一等地に500坪の敷地を有し、その中に洋館建ての屋敷を建て、妻を早く亡くしたものの、子供3人も長女、次女は一流会社のサラリーマンに嫁がせ、その娘も今では2人とも役員夫人として何不自由なく暮らしていました。また一番末っ子ながら弟である長男Bさんは年のいった父親と同居していました。

 Bさんの父親は高齢者で、年金、軍人恩給等そこそこに収入もありましたが、何しろ広大な敷地で、固定資産税、庭の手入れ費用等、その支払いも馬鹿にならず、さらにBさんも父親に同居の子供たちの教育費の支援等を依頼し、父親の金融資産はほとんど残っていない状態でした。

 したがって、家屋の手入れも行き届かず、Bさんの妻も何とかこの使い勝手の悪い家から逃げ出したい想いで一杯でした。

 そんな時、相続が起こったのでした。

 いくら土地の価額が安くなったというものの、大阪市内の一等地で500坪を有していれば、当然のこと相続税がかかります。

 Bさんは以前より父親が高齢につき、2人の姉たちには相続開始になれば居宅地しか財産がないことを話していました。そして長女は相続放棄、また、次女は少しの金銭分与で良い旨の内諾を取っているつもりでした。

 Bさんは納税のため、居宅地の一部を分筆のうえ物納、または一部売却のうえ納税等、いろいろ考慮した結果、同敷地内3分の1に新居を建て替え、残り3分の2を売却し、納税と建替え資金に充当することにしました。

 ところが、思ったより高い価額で売却できることが姉2人に判明し、結果的には相続放棄のつもりの長女までもが、大幅な財産分与を要求する事態となりました。

 最終的に遺産分割協議がまとまったものの、売却時期が大幅にずれ、一時延納手続きを行い、無駄な利子税を払う結果となりました。


問題点

 分不相応の居宅所有がネックとなりました。金融資産が欠如していました。もっと事前から推定相続人間で将来のことを忌憚なく話し合っておく必要がありました。特に同居老親の面倒を見ていても、当然自分が相続できると思わないことが大事でした。

ワンポイント解説

 本来、父親が元気な間に計画実行すべき問題でした。姉弟の力関係で、弟が事前の主導権が取れませんでした。不動産の売却額が相続税評価額より大幅に増加した結果、遺産分割要求をしていなかった相続人が、分割要求する心理が発生したわけです。

成功・失敗理由

 本件は幸いにして居宅売却が短期間にできた結果、延納期間も短期間となり納税完了となりました。もしも売却不可の場合は、いつまでも延納となっていて、無駄な利子税等の支払いが続くおそれがありました。また早期売却が必要なため、居宅物件が買い叩かれる可能性が大でした。

 

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