目次 III


III.住宅の貸与・譲渡に対する取扱い

 雇用の促進と安定あるいは役員や使用人の福利厚生等の見地から、使用者(会社など)が社宅や寮等を設けてこれらの人に提供している例が従来から数多く見受けられ、これらの住宅の確保については、多くの企業において相当な努力がはらわれてきているといえます。

 このように、会社などの使用者が役員や使用人に対して社宅、寮等を無料又は低い家賃で貸与している場合には、その家賃相当額又は家賃相当額と実際に徴収している家賃との差額に相当する利益については、現物給与としての課税問題が生ずることになります。

 この場合、役員に貸与するものと使用人に貸与するものとでは、その取扱いに相違があります。

 なお、職務の性質上欠くことのできないものとして貸与される住宅の経済的利益については課税されないこととされています。


 現物給与の特殊性に応じた課税の特例の規定の仕方としては、(1)一定の非課税限度額を設ける方法、すなわち少額不追求の方法と、(2)経済的利益の評価に際して、現物給与であるが故の特殊性を考慮する方法の2つのパターンがあります。

 社宅や寮の貸与を受けたことによる経済的利益に対する規定の仕方は上記のうち(2)の方法によっています。具体的には、社宅であるが故の特殊性を考慮して作成されている標準家賃の計算式を国税庁通達で示し、この標準家賃と実際に徴収している家賃の額を比べて、課税すべき経済的利益の有無を判定するという方法が採用されています。

 この国税庁通達による通常の家賃相当額を求めるための計算式は、社宅が、(1)家主である会社等が利益を上げるために賃貸しているものではないこと、(2)会社の業務遂行上の必要もあって貸与されていること、(3)必ずしも本人の希望と一致するような住宅とは限らず、入居する住宅の選択の余地が少なく完全な私生活の場とは言えないこと、(4)会社の都合で退居を余儀なくされる場合もあるなど、住居としては、極めて不安定であることなどを考慮し、一般の営利のための賃貸住宅の家賃の算出方法とは異なった方法によっているところに特徴があります。

 ただし、豪華といわれるような役員社宅については、社宅としての特殊性に欠けるという点や少額不追求の観点等からも問題があるところから、一般の賃貸住宅の家賃(時価)により評価することとされています。

 

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