目次 VI-Q9


Q9 相手先を明らかにできない取引と使途秘匿金

Question
 相手先を明らかにできない取引についてはそのすべてが使途秘匿金としての課税を受けることになるのでしょうか?


Answer


 次の通りになります。

 使途秘匿金とは、法人が支出した金銭その他の資産のうち、相手方の氏名等をその帳簿書類に記載していない場合をいいます。ここで「帳簿書類に記載する」とは、元帳や補助簿等の会計帳簿や、領収証、請求書等の書類に相手方の氏名等の記載がある場合をいいます。例えば、領収証を紛失し、または相手方から発行してもらえなかった場合でも、帳簿に相手方の氏名等を記載し、依頼状や振込依頼書等の証拠資料によりそれが確認できれば使途秘匿金には該当しないことになります。

 また、相手先の氏名等の記載がなくても、その記載がないことに相当の理由がある場合には、使途秘匿金にはなりません。例えば、不特定多数の者に対する広告宣伝用物品の贈答、小口の謝金、災害等による帳簿書類の紛失等の場合です。ただし、相手方の氏名等を明らかにすることによって相手方に迷惑がかかる、取引の継続が困難になるというのは、相当の理由にはなりません。

 さらに、取引の対価であることが明らかである場合にも、使途秘匿金にはなりません。使途秘匿金には、金銭の支出以外にも、贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しが含まれます。しかし、商品のように販売する目的で払い出されるものについては、相手方を明らかにしていない場合でも使途秘匿金とはされません。なお、供与については、例えば資産の無償使用等のようなサービスの提供は含まれません。

 最後に、相手方の氏名等の記載がない場合でも、税務署長が相手方を秘匿するためではないと認めるときも、使途秘匿金にはなりません。これは相当の理由がある場合または取引の対価であることが明らかである場合のいずれにも該当しない場合であっても、諸般の事情により、相手方を秘匿するためでないことが明らかな場合は、税務署長の裁量により、使途秘匿金に含めないことができる場合があることを意味します。

 

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