目次 VI-Q1


 VI Q&A


Q1 赤字工事の受注

Question
 小口・小規模の工事に関しては、赤字の見込まれる工事を請け負うことも見受けられます。税務上、何か問題はありますか?


Answer


 ケースによっては、寄附金課税や交際費課税の問題が生じる場合があります。

 赤字工事となったことが当初の見込み違いや予想し得ない突発的な事情の発生に基づくものであればそれは結果論ですので、特段の問題は生じないでしょうが、当初から赤字となることが見込まれる工事の場合には税務上の問題が生じることがあります。

 例えば、貴社と事業上の関係のある得意先から頼まれてこのような工事を受注する場合が考えられます。この場合は、寄附金課税や交際費課税の問題が生じる可能性があります。まず、経済的合理性を追求するという観点からは、本来、赤字の見込まれる工事を受注することはありえないはずです。それをあえて受注するということは、それにより相手方に何らかの経済的利益を供与することになります。この経済的利益を供与するということが、税務上、寄附金になると考えられます。

 他方、税務上の交際費等は、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための支出で、通常、後日何らかの見返りを期待するものですから、赤字工事の受注が、このような場合に該当するのであれば、税務上、交際費等として扱われることも考えられます。

 また、子会社、関係会社、系列会社等からの請負である場合もあります。この場合も、前述した得意先からの受注の場合と同様に、基本的には、寄附金になると考えられます。

 しかし、例えばその会社の倒産・整理等により、工事を引き継いだ結果、損失を蒙る場合もあります。この場合には、子会社等を整理する場合の損失負担等の規定の適用も考えられますので、要件の検討が必要になります。すなわち、赤字工事の受注をしなければ、今後より大きな損失を蒙ることが明らかである場合には、寄附金課税の対象とはされません。

 なお、ここでの子会社等には、子会社や関連会社などのグループ会社だけでなく、一般の得意先も含む点に留意が必要です。

 また、自社の役員や従業員からこのような工事を受注する場合が考えられます。この場合には、通常受注すべき金額と、実際に請け負った金額との差額が、その役員または従業員に対する給与と認定される場合があります。このような工事の受注は、臨時のものでしょうから、役員・従業員いずれの場合も、賞与になると思います。特に、役員の場合には、役員賞与として、所得の計算上、損金の額に算入されない点注意が必要です。また、給与課税になりますので、役員・従業員いずれの場合も、法人は源泉徴収の義務があることにも留意すべきです。

 

目次 次ページ