目次 V-3


3 税務調査

(1)税務調査とは

 法人税及び消費税は申告納税方式の税金です。申告納税方式とは、法人自ら税額を算定し、申告及び納税するやり方です。したがって、法人が税法に基づいて正しく計算を行ったかどうかは、申告しただけではわからないことになります。そこで、国税局や税務署の職員が法人にやって来て、その法人が過去に行った申告が税法に従って正しく算定されているかを確認する作業が必要になります。これが税務調査です。つまり、税務調査は法人が行った申告の適法性を担保する意味があるといえます。


(2)税務調査の種類

 税務調査には、次の3つの種類があります。

 (A) 任意調査
 (B) 強制調査
 (C) 特別調査

 このうち以下に述べる国税局や税務署の行う通常の調査は、(A)の任意調査です。任意調査ではありますが、質問に対する不答弁、検査の拒否・妨害等については罰則が規定されていますので、くれぐれも注意が必要です。

 (B)の強制調査は、国税局の査察部が行うもので、国税犯則取締法に基づき、裁判所の令状をもとに行われるものです。これは相当多額で悪質な脱税が探知された場合に行われます。

 また、(C)の特別調査は、多額の申告漏れがありそうな場合、調査の対象範囲が広域にわたる場合、調査案件が複雑な場合等に、国税局の資料調査課等を中心に行われるもので、任意調査ではありますが、実質は強制調査に近いといわれます。

 なお、税務調査を実施する機関は、国税局と税務署であり、国税庁は調査を行いません(国税庁は、下部組織である国税局の指導監督をする機関です)。


(3)不服申立

 ところで、税務調査により国税当局より指摘を受けた事項のすべてについて納税者が納得するとは限りません。また、調査官がいつも正しいとは限りません。では、国税に関する不服があった場合には、どのような救済措置が認められているのでしょうか。

 国税に関する不服申立については、次の3つがあります。

 (A) 異議申立
 (B) 審査請求
 (C) 訴訟

 まず、原処分庁である税務署長または国税局長に対する異議申立が、不服申立の最初です。申立期限は、処分通知の翌日から2か月以内となっています。

 次に、国税不服審判所長に対する審査請求が続きます。これは、異議決定書謄本送達の翌日から1か月以内に行うことになっています。

 さらに、この請求に対する裁決に不服がある場合には、訴訟を提起することになります。これは、裁決から3か月以内に地方裁判所に対して行います。

 なお、青色申告者は、異議申立を飛ばして、審査請求から入ることも認められています。

 このような不服申立は、国税に関する法律に基づく処分に不服がある場合に行うことができます。ところで、税務調査により行われる修正申告の慫慂(国税当局の計算に基づき修正申告の提出を求めることで、特に税務署による調査の場合には、修正申告が慫慂される場合が多いです)は、一種の行政指導と考えられています。したがって、調査官の慫慂に応じて修正申告した場合には、たとえそれが不本意であっても、その修正申告の是正を求める不服申立をすることはできませんので、注意してください。


(4)仮装経理と更正の請求

 最後に、仮装経理を行った場合の対応と注意点について解説します。ここで仮装経理とは、一般に、法人が実際の状況をよりよく見せるため事実を仮装し、これに基づいて所得金額を過大に申告納付した場合をいいます。いわゆる粉飾決算と一般的に呼ばれるものを指します。

 粉飾決算は、商法や企業会計上においても問題があり、本来、認められないものですが、特に、建設業においては、銀行等の債権者に少しでも良く評価されたい、経営事項審査の評点を少しでも上げたいなどの理由から、しばしば行われているようです。

 一口に粉飾決算といっても、その内容や手法は多岐にわたります。典型的な例は、架空売上の計上です。建設業に例をとれば、架空の完成工事高を計上するとともに、それに見合いの資産勘定(完成工事未収入金や未成工事支出金など)を計上する場合等です。

 税務上は、このような粉飾決算を行った当初はあまり問題が生じないかもしれません。なぜなら、所得を過大に計上していますので、結果として、それに見合う税負担が生じているからです。

 しかし、元々架空のものを計上していますので、いつまでのそのままにしておくというわけにはいきません。いずれは適正に戻す処理をする必要があります。

 税務上、このような粉飾決算を抑制させるために、事実を仮装して経理を行って過大な申告をした場合には、その過大申告に対する減額更正や過大納付税額の還付につき特例を設けています。

 

目次 次ページ