目次 I-1


I.総 論


1 交際費・寄附金の損金不算入制度の趣旨

 企業がその事業を営むに当たって、交際費や寄附金を支出することはほとんど不可避と考えられます。したがって、企業会計上、交際費や寄附金の支出が費用となることについては特に問題はありません。

  これに対して、法人税法上、交際費及び寄附金については、その全部または一部が損金不算入となる制度が設けられています。法人税法第22条では、販売費、一般管理費その他の費用は、別段の定めがあるものを除き、損金の額に算入すると規定されています。これは、法人税法上、損金となる範囲について規定したものですが、その趣旨は、企業会計上費用となるものについては、法人税法に例外的取扱いがあるものを除いて、損金とすることを意味しています。

 つまり、企業会計上の費用と法人税法上の損金は原則として一致し、法人税法上に別段の定めがある場合は、企業会計と法人税でその取扱いが異なることになります。

 そして、交際費と寄附金はいずれも別段の定めに該当し、その結果として、企業会計とは異なる取扱い、すなわち、損金不算入制度が設けられています。ではなぜ交際費や寄附金について法人税法上、損金不算入となる規定があるのでしょうか。

 まず交際費については、昭和29年の租税特別措置法の改正によって損金不算入制度が設けられました。その制度趣旨は、企業の資本蓄積の促進にありました。すなわち、当時、減価償却の励行、準備金や特別償却制度の創設、資産再評価の強制、高率配当の自粛、増資配当の免税等の措置が資本充実のための諸施策として講じられ、交際費課税についても、その一環として、できる限り冗費を節約するために設けられました。

 次に寄附金については、昭和17年の臨時租税措置法の改正によって損金不算入制度が設けられました。その制度趣旨は、国庫収入の財源確保にあったのですが、その後、法人税の規定の整備にともない、寄附金は事業に関連するものではなく、多分に利益処分的な性格が強いことが寄附金課税の論拠として主張されています。また、無制限に損金算入を認めると、それに見合う法人税が減少し、寄附金の一部を国が負担する結果となることもあげられます。

 

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