目次 VI-2


第2章 アウトソーシング

 1 アウトソーシングの目的を達成するために

 アウトソーシングは、企業がコストの削減を図り、専門性を確保しつつ、余剰資源を本来的業務に集中させて競争力の強化を図るという効果が期待される事業再構築の一手法である。アウトソーシングには、このような効果が期待できると同時に問題点もある。そこで、アウトソーシングを成功させ、その効能を最大限に発揮するためには、アウトソーシングの問題点を踏まえた上でその対応策を講じる必要がある。

1 問題点の把握

 アウトソーシングの一般的な問題点として指摘されるのは次の点である。
 (1) 委託業務に関する管理権限の喪失
 (2) ユーザーの情報技術の空洞化
 (3) セキュリティ問題
 (4) サービスの質の低下・業務の遅滞

 アウトソーシング活用による現実的な問題点として、当初の目的とは異なり、サービスの質が低下したこと、業務の迅速化が図れなかったこと等が指摘されている。

2 問題点の解決策

 以上の問題点に対処するためには、以下の点に留意する必要がある。

 (1) 優れたアウトソーサーを選定すること
 (2) 重要な点をアウトソーシング契約で明確化すること
 (3) 委託業務の適切な管理・マネジメントを行うこと


 2 労働問題

【アウトソーシング活用会社の従業員の処遇】

  従業員を移転させない場合

 アウトソーシング活用会社は、従業員を移転させないで業務を外部に委託する場合に、余剰人員を他部門に配転して有効活用することができる。配転は、一般的に従業員の同意を得ずに会社が一方的に行えるとされている。

 また、経営合理化を図ってアウトソーシングにより余剰となった従業員をリストラすることもある。この場合は、解雇権の濫用にあたらないよう慎重な対応が必要である。まずは希望退職を募集し、退職勧奨を行う必要があろう。最終的に整理解雇を行うにしてもその要件(経営上の必要性・解雇回避措置・整理対象者の人選の合理性・人員整理手続の妥当性)は判例上かなり厳しいものとなっている。

  従業員を移転させる場合

 アウトソーシング活用会社が従業員を移転させる方法として、出向と転籍が考えられる。

(1) 出向― アウトソーシング活用会社の従業員という身分のままでアウトソーサーに委託された業務に従事する場合

 アウトソーシング活用会社は、従業員に対して一方的に出向を命じることができるだろうか。この点、判例では、労働協約または就業規則等において出向を命ずることがある旨の規定をおいている場合には、従業員の同意なくして一方的に行い得るが、出向命令時には出向期間・出向先での労働条件を示さなければならないとしている。もっとも、出向を円滑に行うためには従業員の同意をとる方が望ましいであろう。なお、(1)出向を命ずる業務上の必要性がない場合、(2)出向対象者の人選が合理的でない場合、(3)出向により労働条件が悪化する場合には、権利濫用(民法第1条第3項)に当たり出向が制限されることもあるので注意が必要である。

(2) 転籍― アウトソーシング活用会社の従業員としての身分を失い、アウトソーサーの従業員となって委託業務に従事する場合

 アウトソーシング活用会社は、個々の従業員の同意を得てから転籍を命じる必要がある。なぜなら、出向とは異なり、従業員は従来の身分を失うという重大な不利益を被ることになるからである。

 なお、従業員が転籍した場合に、アウトソーシング活用会社の指揮命令下の下で委託業務に従事する場合には、「アウトソーサーの従業員を活用する問題点」と同様の問題を生じる。

(3) 分社化する際に会社分割を利用する場合

 この点は、会社分割特有の労働問題があるので、『新版・企業組織再生プランの法務&税務』(清文社刊)を参照してほしい。

 

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