目次 V-3


第3章 民事再生の法務&税務

 1 民事再生の法務

1 民事再生法の概要

【民事再生法制定の経緯】

 わが国の倒産処理手続としては、これまで破産、和議、会社更生、会社整理及び特別清算の5つの手続が存在していたが、これらの手続はいずれも制定以来長い年月が経ち、現在の経済状況に到底対応できない事態が生じてきていた。

 そこで、かねてから倒産法制全体を見直すべきであるとの指摘がなされていたが、平成8年10月、法務大臣より諮問を受けて、法制審議会は新たに倒産法部会を設け、5年を目処に倒産法制全体の見直し作業に着手した。

 ところが、長引く不況の下、倒産事件が急増する状況を踏まえて、平成10年9月には、倒産法制のうち中小企業向け再建型倒産処理手続を切り離して、平成11年度中の立法化が目指されることになった。

 その後、倒産法部会における急ピッチの立法作業の結果、平成11年11月5日、「民事再生法案」は閣議決定され、その後、同年12月7日、衆議院本会議で可決され、同月14日、参議院本会議で可決され、民事再生法として成立した(和議法は民事再生法の施行に伴い廃止された(附則第2条))。

【再生手続の流れ】(図表参照)

 民事再生法は、再生債務者が業務の遂行及び財産の管理処分権を原則として保持しつつ、再生計画案を作成提出し、債権者の法定多数の同意により可決された再生計画に基づいて、再生債務者の事業または経済生活の再生を図る手続である。

 再生手続の流れについて、以下、原則的なケース(簡易再生及び同意再生の場合を除く)について簡単に説明する。

図表 再生手続の流れ
図表 再生手続の流れ


 2 民事再生の税務

1 債権者側の税務

【貸倒引当金の概要】

 法人が、その有する金銭債権について貸倒れによる損失見込額及びその他これに類する事由による損失の見込額として損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額のうち、期末における金銭債権の額を基礎として算定される繰入限度額に達するまでの金額は、申告を要件として法人税法上の損金として認められる(法人税法第52条第1項)。

 平成10年税制改正により、平成10年4月1日以後に開始した事業年度の貸倒引当金は、(1)個別に評価する債権(個別評価債権)と(2)一括して評価する債権(一般売掛債権等)を区分して計算する方式となり、繰入限度額は(1)と(2)の金額の合計額となった。

2 債務者側の税務

【資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金の損金算入】

 民事再生法の再生計画の認可によって、債務者側に債権者側から債権の一部切捨てによって債務免除益が発生する。認可のあった日を含む事業年度単独では多額の債務免除益が発生し、通常の所得計算では法人税等の負担が生じ再建が困難になるおそれがある。

 そこで法人税法においては、特別の規定を設け一定の事実があった場合、過去の欠損金額のうち債務免除益に達するまでの金額をその事業年度の損金にすることができる。

 資産整理に伴う私財提供等があった場合の欠損金の損金算入の制度は、商法の整理開始の命令など「一定の事実」があった場合、役員・株主等(役員・株主であった者を含む)から金銭その他の資産の贈与を受け(私財提供益)、またはその法人の債権者から債務の免除を受けた(債務免除益)場合には、それらを受けた日の属する事業年度前の事業年度において生じた欠損金額のうち、私財提供益または債務免除益に相当する金額の合計額に達するまでの金額を、その贈与等を受けた日の属する事業年度の損金に算入するというものである(法人税法第59条第1項)。

 

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