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第V部 M&Aの法務&税務 |
第1章 合併の法務&税務 |
1 合併の意義 合併とは、2つ以上の会社が法定の手続によって合体し1つの会社となることをいう(商法第56条・第98条以下・第408条以下、有限会社法第59条以下)。 合併の態様には、「新設合併」と「吸収合併」がある。 「新設合併」とは、合併当事会社のすべてが解散し、解散会社の社員及び財産が、新たに設立された会社によって収容されるものである。 「吸収合併」とは、合併当事会社の1つが存続し(存続会社)、他の当事会社が解散して(解散会社)、存続会社が解散会社の財産及び社員を収容するものである。 しかし、実際に行われるのは吸収合併がほとんどである。その理由としては、
2 合併契約書の承認決議 T 吸収合併の場合 合併契約書の承認決議については、商法第343条所定の決議に従って行われる(商法第408条第2項)。 しかし、消滅会社の定款に株式譲渡制限の定めがなく、存続会社の定款に株式譲渡制限の定めがある場合においては、商法第408条第1項の合併契約書の承認決議は商法第348条第1項・第2項の規定によらなければならない(商法第408条第5項前段)。 同様に、存続会社が合併に際して定款変更を行い、株式譲渡制限の定めを置くようになる場合においても、商法第348条第1項・第2項の規定によらなければならない(商法第408条第6項)。 なお、一定の要件を満たす簡易合併の場合には、存続会社において承認決議は不要となる。 合併契約書の要領は、合併契約書承認総会の招集通知に記載されなければならず(商法第408条第3項)、また、消滅会社の定款に株式譲渡制限の定めがなく、存続会社の定款に株式譲渡制限の定めがある場合においては、消滅会社の合併契約承認総会の招集通知には、存続会社の定款に株式譲渡制限の規定がある旨を記載しなければならない(商法第408条第7項)。 II 新設合併の場合 合併契約書の承認は、合併当事会社の総会で承認されるが、その際の決議要件は吸収合併の場合と同様である(商法第408条第4項)。 新設合併において、消滅会社に株式譲渡制限がなく、新設会社の定款に株式譲渡制限規定を設けるときの決議要件も、吸収合併の場合と同様である(商法第408条第5項後段)。 合併承認総会の招集通知への記載についても、吸収合併の場合と同様である(商法第408条第3項)。
1 合併の税務の概要 平成12年5月「会社分割制度」を創設する商法改正が成立し、平成13年4月1日施行された。これに伴い税制の整備を行うため、平成13年度税制改正では、分割だけでなく、合併、現物出資、または事後設立を「組織再編成」とし、企業組織再編成に係る税制を整備した。企業組織再編成に係る税制は、平成13年4月1日以後に行われる組織再編成について適用される。 2 企業組織再編税制のポイント 【資産が移転する場合の法人の譲渡損益の取扱い】 法人の譲渡損益の取扱いは以下のとおりである。組織再編税制では、組織再編成により法人の有する資産が移転した場合には、原則として、時価により取引をしたものとして譲渡損益を認識することになる。 ただし、その場合でも、移転する資産に対する支配が実質的に継続されていると認められる場合には、特例として、資産は帳簿価額により移転したものとして譲渡損益を認識しない(課税の繰延べ)ことになる。 「資産の譲渡損益に対する課税が繰り延べられる場合」とは、具体的には、企業グループ内の組織再編成か共同事業を行うための組織再編成のいずれかに該当する場合である。この特例が認められるケースを、適格組織再編成という。 適格合併・適格分割・適格現物出資については、移転資産等の価額は帳簿価額による引継ぎ(適格合併・適格分割型分割)または譲渡(適格現物出資・適格分社型分割)となり、移転法人において譲渡損益は認識しない。 【適格組織再編成の要件】(図表) 適格組織再編成には、適格合併・適格分割・適格現物出資・適格事後設立の4類型がある。適格合併・適格分割・適格現物出資については、企業グループ内の組織再編成または共同事業を行うための組織再編成のいずれかの要件を満たすことが必要である。 適格要件を満たさない場合には、時価による譲渡が行われたものとして、合併・分割型分割においては、譲渡日の前日の属する事業年度に、また、現物出資・分社型分割においては、譲渡日の属する事業年度に、それぞれ譲渡損益を計上することになる。
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