目次 IV-3


第3章 株式交換比率と株式移転比率の決定事例

 1 株式交換比率の決定

 株式交換により完全親会社となる会社は、完全子会社となる会社の株主から完全子会社となる会社の株式を受け入れるとともに、新株を発行するか、保有する自己株式を引き渡す。この完全親会社株式と完全子会社株式の交換比率を“株式交換比率”という。

 この株式交換比率は、合併時の合併比率に匹敵するもので、株式交換の条件交渉が焦点となる。その算定にあたっては、合併比率と同様に、完全親会社の1株当たりの価値で完全子会社の1株当たりの価値を割って計算する。1株当たりの価値の算定式は規定されていないが、例えば、上場会社では市場価格の平均値が指標となり、非上場会社では時価純資産価額方式、類似業種比率方式、収益還元価額方式、DCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)方式等、対象となる会社の状況に応じて適正な評価方法が採用されるべきである。

 なお、株式交換比率の税務上の問題としては、合併比率のそれと同様に、不適切な比率により課税上弊害が生ずる場合には、完全親会社の株主と完全子会社の株主間において無償による価値移転とみなした課税が行われることがある。

 特に、個人間の場合には、多額の贈与税が発生する可能性があるので注意が必要である。

 

目次 次ページ