目次 III-1


第III部.会社分割の法務&税務


第1章 会社分割の法務(平成12年法改正)

 1 会社分割の概要

1 会社分割法制の目的

 会社分割法制の創設等を目的とする「商法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という)は平成12年5月24日に成立、同月31日に公布された。同法は、平成13年4月1日から施行されている。

 この改正法の目的は、企業間の国際的な競争が激化している現在の経済状況下で、企業が経営効率化や企業統治の実効性を高めて競争力の強化をするために、企業組織の柔軟かつ迅速な再編を実現することにある。改正法は、このような企業再編の法整備の一環として創設されたものである。なお、具体的な企業再編への活用法については「第2章 会社分割の税務」以降を参照してほしい。

2 会社分割の類型

 会社分割は、A社の営業の全部または一部をA社から切り離し、その切り離された営業をB社に承継させる制度である。そして、営業を承継するB社に焦点を当てたのが新設分割・吸収分割という分類である。具体的には、B社が分割に際して新たに設立される場合を“新設分割”といい、B社がすでに存在する会社の場合を“吸収分割”という。

 また、会社分割ではA社の営業をA社から切り離してB社に承継させるときに、B社は営業承継の対価として株式を発行し、それを割り当てる。この株式の割当先に焦点を当てたのが“物的分割・人的分割”という分類である。具体的には、株式の割当先が物的会社であるA社のときを“物的分割”といい、その割当先が人的な株主のときを“人的分割”という。

 また、物的分割を分社、人的分割を分割と称する場合もある。

 このように、会社分割は、営業を承継する会社が新設会社か既存会社かと、営業を承継する会社が発行する株式の割当先が分割会社か分割会社の株主かという組合せによって、基本的には以下のような4類型に分類できる。また、これら4類型の修正型で、“一部分割”という類型もある(第2章 図表参照)。

 (1)  新設・物的分割型
営業を承継するB社が新設会社であり、かつ、B社が営業の承継に際して発行する株式を分割会社であるA社に割り当てる類型である。
 (2)  新設・人的分割型
営業を承継するB社が新設会社であり、かつ、B社が株式の割当てを分割会社A社の株主甲にする類型である。
 (3)  吸収・物的分割型
営業を承継するB社が既存会社で、かつ、B社の株式の割当てを分割会社であるA社にする類型である。
 (4)  吸収・人的分割型
営業を承継するB社が既存会社で、かつ、B社の株式の割当てを分割会社であるA社の株主甲にする類型である。

 一部分割
 物的分割と人的分割の折衷的な類型で、分割する会社A社から営業を承継したB社が、その発行する株式を、A社(物的分割)とA社の株主である甲(人的分割)の双方に割り当てる場合である。

 

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