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10.適格事後設立

 事後設立とは、会社の営業用として予定しておいた財産を、会社設立後、会社が譲り受ける契約をすることです。つまり、まず事後設立法人が金銭を出資して被事後設立法人を設立し、株主となります。その後、事後設立法人の資産を被事後設立法人に時価で売却し、事後設立法人は再び金銭を受け取ります。結果的には、株主となる事後設立法人が、現物出資により被事後設立法人を設立した場合と同じ効果が出ます。したがって、事後設立は現物出資の代替として用いられる手法といえるので、商法では法人設立後2年以内の事後設立については、現物出資の場合と同様、裁判所が選任する検査役の調査が必要であるとしています。

 事後設立による資産等の移転は、商法上、通常の時価による資産等の売買取引とされているため、事後設立による資産の移転に伴って授受される金銭は、移転資産等の時価相当額となります。

 法人税法では、適格組織再編成のうち、一定の要件を満たした事後設立についても、適格事後設立として移転資産の譲渡損益の額を繰り延べることができますが、取引の形態上、他の適格組織再編成と比して、二つの点が大きく違います。

 一つは、移転資産の対価となる金銭の授受が行われることです。現物出資の場合は、金銭の授受はなくとも資産等を移転することにより株式の交付を受けることができますが、事後設立の場合は、移転資産等の対価は株式ではなく金銭となることです。もう一つは、移転資産等の価額は時価となるため、譲渡損益の額を認識することになることです。

 しかし、法人税法では、事後設立が現物出資の代替として用いられる場合であれば、結果的には同じ効果が出ることから、時価譲渡並びに金銭の授受があることを前提とした上で、次のような要件を満たした場合には、適格事後設立として課税を繰り延べることとしています。

 (a)  事後設立法人がその資産・負債を被事後設立法人に移転するまで、被事後設立法人の株式を100%保有していること
 (b)  事後設立法人が被事後設立法人の株式の100%を当該事後設立後も継続して保有する見込みがあること
 (c)  資産等の譲渡が被事後設立法人設立時に予定されており、かつ当該設立後6月以内に行われたこと
 (d)  資産等の譲渡の対価が被事後設立法人設立時の払込金銭の額とおおむね同額であったこと

 上記要件を満たした適格事後設立に該当する場合、事後設立法人においては、移転する資産等の価額を、帳簿価額修正損益により当該譲渡に係る原価等の額(原価+その他の費用)まで修正することで譲渡損益の額と相殺し課税を繰り延べます。同時に、事後設立法人が所有する被事後設立法人の株式の取得価額についても、この帳簿価額修正損益に相当する金額を加減算し、修正します。

 また、被事後設立法人においては、当該帳簿価額修正損益に相当する金額を資本積立金として、移転資産・負債の価額を税務上の簿価に修正します。

〔適格事後設立の設例〕
〔適格事後設立の設例〕
*1 別表四にて減算
*2〜4 別表五(一)に記載

 

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