目次 11


11.資本の部の取扱い

 資本の部の構成については、基本的には商法に従うことになります。

 分社型分割や現物出資については、商法上、利益準備金・剰余金を引き継ぐことは認められていません。これは、資産を移転し、その対価として移転法人が株式を受け取ることから、いわば資産の形態が変わるだけなので、移転法人から承継法人に利益準備金は引き継がないこととされています。したがって、税法においても、承継法人が移転法人の利益積立金を引き継ぐことはできず、資本超過額はすべて資本積立金として計上します。

 合併と分割型分割については、商法上、利益準備金の引継ぎが認められています。これについて、税法では、適格合併・適格分割型分割に限って利益積立金の引継ぎができるとしています。これは、移転資産等が帳簿価額で引き継がれ、従前の課税関係をそのまま継続させることが適当であると認められるからです。一方、非適格の合併と分割型分割については、資産等の移転が時価で行われるため利益積立金の引継ぎはできません。

 このような前提をふまえて、今回の税制改正では、資本積立金及び利益積立金の規定について大幅に改正・拡充されました。その特徴は、資本積立金及び利益積立金の加算項目と減算項目について各組織再編成ごとに詳細に規定されたことです。各組織再編成ごとに税法上の規定をまとめると以下のようになります。

(1)合併





適 格 資本積立金 簿価純資産額−引継利益積立金額−増加資本金額等
(法法2十七ハ、法令8の2(1)(2))
利益積立金 被合併法人から引き継ぐ利益積立金額
(法法2+八ニ、法令9(1))
非適格 資本積立金 時価純資産額等−増加資本金額等
(法法2十七ハ、法令8の2(1)(2))
 適格合併における引継利益積立金額(法令9(1))
 被合併法人の合併の日の前日の属する事業年度終了時の利益積立金額

(2)分割型分割







適 格 資本積立金 簿価純資産額−引継利益積立金額−増加資本金額等
(法法2十七ニ、法令8の2(3)(4))
利益積立金 分割法人から引き継ぐ利益積立金額
(法法2十八ホ、法令9(2))
非適格 資本積立金 時価純資産額等−増加資本金額等
(法法2十七ニ、法令8の2(3)(4))





適 格 資本積立金 簿価純資産額−減少利益積立金額−減少資本金額
(法法2十七ヨ)
利益積立金 分割承継法人へ引き継ぐ利益積立金額
(法法2十八ル、法令9(4))
非適格 資本積立金 分割資本等金額−減少資本金額
(法法2十七カ、法令8の2(3)(4))
利益積立金 株主に交付したものとされる金銭の額及び金銭以外の資産の価額−分割資本等金額(法法2十八リ)
分割資本等金額(法令8の2(8))
分割法人の資本等金額× 分割法人の移転資産帳簿価額−分割法人の移転負債帳簿価額(B)

分割法人の資産の帳簿価額−分割法人の負債の帳簿価額(A)
いずれも分割型分割の日の前日の属する事業年度終了時の価額
(B)/(A)は小数点以下1位未満の端数切上げ
適格分割型分割における引継利益積立金額(法令9(4))
分割法人の利益積立金額× 分割法人の移転資産帳簿価額−分割法人の移転負債帳簿価額(B)

分割法人の資産の帳簿価額−分割法人の負債の帳簿価額(A)
いずれも分割型分割の日の前日の属する事業年度終了時の価額
(B)/(A)は小数点以下1位未満の端数切上げ

(3)分社型分割







適 格 資本積立金 簿価純資産額−増加資本金額等
(法法2十七ホ、法令8の2(5))
非適格 資本積立金 時価純資産額−増加資本金額等
(法法2十七ホ、法令8の2(5))

(4)現物出資





適 格 資本積立金 簿価純資産額−増加資本金額
(法法2十七ヘ)
非適格 資本積立金 時価純資産額−増加資本金額
(法法2十七イ)

(5)事後設立





適 格 資本積立金 適格事後設立により移転を受けた資産負債の帳簿価額修正益に相当する金額(法法2十七ト)
設立時 時価純資産予定額−増加資本金額
(法法2十七イ)
非適格 資本積立金 設立時 時価純資産予定額−増加資本金額
(法法2十七イ)


適 格 資本積立金 適格事後設立により移転を受けた資産負債の帳簿価額修正損に相当する金額(法法2十七タ)

 

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