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9.適格現物出資

 従来の特定現物出資の制度(旧法法51)では、(1)新たに法人を設立するための現物出資であること、(2)現物出資法人の持分割合が95%以上であること、(3)持分割合が95%未満になることが見込まれていないこと の三つの要件を満たすことによって圧縮記帳による課税の繰延べが行われてきました。

 現物出資の制度は、その経済効果が分社型分割とほぼ同じであることから、企業再編税制において、適格現物出資は、適格分社型分割とほぼ同様の取扱いに改正されました。その結果、現物出資によって新設法人を創出する場合だけではなく、既存の法人に対して現物出資による増資も可能となりました。

 しかしながら、現物出資固有の問題もあることから、ここでは、主な現物出資の特徴について述べてみましょう。


(1)海外子会社への出資

 会社分割・合併については、商法上、関係法人は内国法人に限られますが、現物出資の場合は内国法人に限らず、海外においても子会社を設立すること等が可能です。税法は、外国法人に現物出資をする場合、非適格となる移転資産及び負債について、「国内にある事業所に属する資産又は負債」と限定しています(法令4の2(7))。したがって、内国法人が海外にある資産を外国法人に現物出資をする場合は、税法上適格となることが可能です。


(2)検査役の調査

 現物出資の場合は、一定の場合を除き、検査役の調査が必要です。


(3)消費税とその他の課税問題

 会社分割の場合は資産等の移転は包括承継と解されるため、移転資産等についての消費税の課税問題はありませんが、現物出資における資産等の移転は消費税法上の資産の譲渡等に該当し、課税取引となります。

 

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