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6.共同事業を行うための適格組織再編成(合併・会社分割・現物出資)

 持分割合が50%以下の関係にある法人間、あるいはまったく持分関係のない法人間であっても、共同で事業を行うために事業統合などの組織再編成が行われています。このような企業グループの枠を越えた組織再編成についても、税法では、一定の要件を満たす限り移転した資産の支配は継続されているものとして、適格組織再編成を認めています。

(1)共同事業を行うための組織再編成における税制適格要件

 共同事業を行うための適格組織再編成となるためには、当然ながら再編前の持株関係についての規制はありませんが、それに代わって「共同事業」であるための判定要件を満たす必要があります。また、企業グループ内の適格組織再編成に必要とされた三つの適格要件(移転資産の対価として株式以外の金銭等の交付がないこと、独立事業単位要件、移転事業継続要件)に加えて、さらに取得株式継続保有要件のすべてを満たす必要があります。


(2)「共同事業」の判定要件

 持分割合が50%以下又は持株関係のない法人間で適格組織再編成を行うためには、まず、税法上の「共同事業」に該当しなければなりません。税法上の「共同事業」に該当するかどうかの判定は次の(イ)と(ロ)又は(ハ)です。

 (イ) 事業関連性要件

 事業関連性要件とは、合併等の組織再編成を行う前にそれぞれの当該法人において営んでいた事業が、相互に関連性があることを求めた要件です。組織再編成の対象となる事業の関連性については、持株関係のない法人間において当該再編を行う最大の目的となることから、その関連性の説明には十分な理由が必要となります。なお、税法上は以下のような規制があります。

(共同事業の対象となる事業)
  移転法人 承継法人
合 併 合併前の主要な事業 合併前に営むいずれかの事業
会社分割 承継法人に引き継がれる事業 分割前に営むいずれかの事業
現物出資 承継法人に引き継がれる事業 現物出資前に営むいずれかの事業

 (ロ) 事業規模類似要件

 事業規模類似要件とは、共同で行う事業の規模の比率がおおむね1:5の範囲内であることを求めた要件です。税法では、当該法人双方が、あくまでも「共同」で事業を行う場合に適格組織再編成としています。あまりにも規模が違う法人間の事業統合は、「共同事業」とはいえず、むしろ「買収」に近い事業統合であるので、規模の制限を加えています。

 比較対象となる事業の規模は、売上金額や従業者の数(合併・会社分割・現物出資の場合)や当事法人の資本金額(合併の場合)、若しくはこれらに準ずるもので判断します。また、売上金額や従業者の数等については、会社単位ではなく、共同事業の対象となる事業ごとに比較判断すればよいとされています。

 (ハ) 特定役員参画要件

 将来性のある成長著しい事業との統合を考えるときなど、共同事業の判定要件として事業規模類似要件では必ずしも相応しくない場合が考えられます。

 そのような場合には、当該法人双方の役員が共同事業の経営に参画すれば、「共同事業」としての要件を満たすこととしています。これは、規模の小さい法人からも経営に発言権のある役員を参画させることによって、共同で事業を行うとする目的に適うものであり、規模の違いによる「買収」とはいえないと判断できるからです。

 ここでいう役員の参画とは、再編後において当該法人双方から「特定役員」となる役員を参画させる場合をいいます。「特定役員」とは、社長、副社長、代表取締役、専務取締役、常務取締役又はこれらに準ずる者で経営に従事する者とされます。したがって、経営の実態を担う役員でなければならないことから、使用人兼務役員や社外取締役では要件を満たすことはできません。また、執行役員については経営に参画しているかどうかで判断されます。

 なお、再編後に特定役員となる者の再編前の地位については、以下のような制限があります。

(再編後に特定役員となる者)
  再編前移転法人 再編前承継法人
合 併 特定役員 特定役員
会社分割 役員等 特定役員
現物出資 役員等 特定役員

 なお、特定役員になった者の就任期間については、税法上は何も規定されていませんが、あまりに短い就任期間では、共同事業を行うために特定役員を派遣するという税法の趣旨に反することなので注意が必要です。


(3)取得株式継続保有要件

 企業グループ内の組織再編成においては、再編の前後において株式の保有割合について100%の完全支配関係又は50%超の支配関係の継続が求められていますが、共同事業を行うための組織再編成においても、再編後の取得株式について一定の制限が設けられています。

 また、企業グループ内の組織再編成においては、発行済株式の総数に対して、一律に保有割合の継続が求められているのに対し、共同事業を行うための組織再編成では、組織再編成の形態によりその条件が違っています。

 移転法人の株主等の数が50人以上の合併及び分割型分割については、この取得株式継続保有要件は不問とされています。これは、株主が多数存在する企業や、証券市場において自由に売買される上場企業の株式にまで継続保有の要件を課すことは現実的ではないからです。それ以外の再編については、合併、分割型分割、分社型分割、現物出資それぞれにおいて下記のように規定されています。

  新株の交付を受ける株主 適 格 要 件
合   併
分割型分割
移転法人
の株主
株主50人以上 取得株式継続保有要件は不問
株主50人未満 再編直前の移転法人の株主で、新たに交付を受ける取得法人の株式の全部を継続して保有することが見込まれる者が有する株式の合計数が、移転法人の発行済株式の80%以上であること(議決権のある株式に限る)
分社型分割
現物出資
事後設立
移転法人 移転法人が、再編により交付される取得法人の株式の全部を継続して保有することが見込まれていること

 

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