目次 I-2


2 返還時期

 借主は、貸主に対して目的物と同種、同品質及び同量の同じ物を返還する義務を負いますが、返還時期は、当事者が返還時期を定めたときは、そのときが返還すべき時期になります。

 当事者が返還の時期を定めなかった場合は、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができます(民法591条1項)。消費貸借は、借主が目的物を消費(利用)して何らかの利益を享受するために行われるのですから、貸主が直ちに返還を求めることは不合理だからです。

 「相当の期間」がどの程度の期間を指すのかは一義的ではありませんが、契約の目的や目的物の性質、数量等、その他の個別具体的事情から合理的に推測することになるでしょう。

 あまりに短い期間を定めて返還の催告をしても、貸主の定めた期間が相当でないことになり、この期間の経過によっては返還を求めることができないことになりますが、催告自体が無効になるわけではなく、催告から客観的に相当な期間を経過すれば返還時期が到来します。

 判例は、「催告に一定の時期や期間を、当事者が明示していなくとも、その催告の時から返還の準備をするのに相当の期間が経過した後には、借主は遅滞の責めに任ずる」(大判昭和5年1月29日民集9・97)としています。

 返還時期を定めなかった場合、借主の方からはいつでも返還できます(民法591条2項)。

 

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