目次 第4章 II−2


2 売却前の子会社合併

 会社売却を行う場合、子会社など関係会社との複雑な取引関係があると、対象会社の収益性の実態がよくつかめないため、買い手は資本関係の整理を要求してくる。そこで、関係会社を対象会社と合併させるなど、対象会社単独の収益性が見えるような形に組織再編することも必要となる。ただし、グループ会社の組織再編の結果として、対象会社の株主構成も変化する場合があるため、取引スキームの立案には注意が必要である。

 対象会社に子会社がある場合、それを一緒に売却するかどうかが問題となる。基本的には、事業に関係のある会社は対象会社と合併させ、関係のない会社は切り離したほうがよい。

 資産管理会社は、オーナー個人の会社として残しておきたい、売却したくないという会社がある場合は、対象会社と分離しやすいように資本関係や取引関係を整理しておくべきである。

 関係会社の株式を対象会社のオーナーや対象会社が100%保有していれば、容易に合併させることができるが、他の株主がいる場合は少数株主との調整が必要になる。その場合、関係会社を合併するには、少数株主の株式を買い取って100%子会社化した後に、対象会社と合併させる必要がある。

 100%子会社を合併させる場合、無対価で合併を行うことが多い。しかし、100%グループ内での合併であっても、会社売却を前提とした合併は、支配関係の継続要件を満たさないため非適格合併になる。非適格合併になると、資産及び負債を時価で移転して譲渡損益が計上さることが原則ではあるが、100%グループ内での非適格合併にはグループ法人税制が適用され、譲渡損益調整資産に係る譲渡損益が繰り延べられる。すなわち、消滅会社(子会社)から移転した資産が譲渡損益調整資産に該当するときには、消滅会社(子会社)においては、その譲渡損益調整資産に係る譲渡損益を計上せず、存続会社(対象会社)においては、移転を受けたその譲渡損益調整資産を消滅会社(子会社)の帳簿価額により受け入れることとなる。

 このように会社売却を前提とした合併は、100%グループ内の組織再編ではあっても税制非適格となる一方でグループ法人税制の適用があるため、税務上の取扱いが複雑になる。


図表4−12 無対価での合併のパターン

図表4−12 無対価での合併のパターン

 

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