目次 II-2


2.有価証券の譲渡損益の計上時期

 Question2-2

 有価証券の譲渡時期としての受渡日基準、約定日基準、修正受渡日基準について説明してください。


契約の締結時に売買を認識する約定日基準を原則とし、特例として有価証券の引渡しのあった日に売買を認識する修正受渡日基準も認められています。また、経過措置として受渡日基準が認められています。


 Answer

1 有価証券の譲渡による損益の計上時期

 有価証券の売買取引は、契約を行ったときから、その金融資産の時価の変動リスクが契約当事者に生じていると考えられます。そのため、会計上、契約の締結時において有価証券の売買を認識する約定日基準で処理を行うことになっています(実務指針22)。

 このように、有価証券の売買において、会計上、約定日基準が採用されたこと及び有価証券の取引では売買等の約定日にその移転の認識が妥当であると考えられることから、税務上も約定日基準が原則的処理とされています(法法61の21の2(1))。


2 約定日基準を採用する場合の具体例

  法人税基本通達において、次のように約定日基準を適用する場合の具体的な譲渡損益計上日の取扱いが規定されています(法基通2−1−22)。

具体的ケース 譲渡損益計上日
証券業者等に売却の媒介、取次ぎ等の委託をしている場合  有価証券の売却に関する取引が成立した日
相対取引により有価証券を売却している場合  取引報告書に表示される約定日、売買契約書の締結日等の相対取引の約定が成立した日
株式の消却、資本の減少、出資の減少等が生じた場合  株式の消却、資本の減少、出資の減少等の事実が生じた日
合併による場合  合併期日又は合併登記の日
解散による残余財産の分配による場合  その分配の開始の日
 なお、分配が数回に分割してされた場合には、それぞれの分配の開始の日
株式交換、株式移転による場合  株式交換日期又は株式移転の登記の日


3 譲渡損益の計上時期の特例(修正受渡日基準)

 有価証券の譲渡による損益の計上時期の特例として、売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券、その他有価証券の区分ごとに、その有価証券の引渡しのあった日に計上することも認められています。また、有価証券の取得についても、譲渡の場合と同様に、その引渡しのあった日に取得したものとして処理することも認められています(法基通2−1−23)。この税務上の計上時期の特例は、会計上とおおむね同じ取扱いとなっています(実務指針22、235)。

 なお、この特例を採用する場合、次の点に留意する必要があります。

(1)  有価証券の譲渡及び取得のいずれについてもこれらの取扱いを適用している場合に、継続適用を条件として認められるものです。
(2)  この取扱いは、期末に未引渡しとなっている有価証券は除くことになっています。つまり、期末において未引渡しの有価証券がある場合は、有価証券の売却側は、その売却損益だけを約定日に計上し、購入側は、約定日から期末までの時価の変動のみを認識することになります。


4 受渡日基準による経過措置

  売買目的外有価証券の譲渡損益の計上時期は、平成12年4月1日から平成14年3月31日までの間に開始する事業年度について、譲渡損益のすべてを引渡日の属する事業年度とすることが経過措置として認められています(平12改法附則3(2))。

 また、会計上においても、売買目的以外の有価証券は、適用初年度から2年以内については、約定日から受渡日までの期間が通常の期間であるときは売却損益を受渡日に計上することが認められています(実務指針207)。

 税務上も会計上も、売却損益の計上を受渡日に処理することは同じですが、次のように取扱いの異なるところがあります。

(1)  会計上は、約定日から受渡日の期間が通常の期間であることが必要です。
(2)  売買目的外有価証券であるその他有価証券は、会計上は時価評価されるため、期末日には評価差額を資本の部に計上する必要があります。

 

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