目次 第3章


第3章 法人税

3.固定資産・減価償却 3-3

(1) 減価償却資産の範囲

 減価償却資産については、土地や美術品などのように、使用または時の経過によって価値の減少が起こらないとされるものは原則的に含まれませんが、例外的に書画骨董に該当するかどうか明らかでない美術品等でその取得価額が1点20万円(絵画にあっては、号2万円)未満であるものについては、減価償却資産として取り扱うことができます。


(2) 固定資産の取得価額

 固定資産の取得価額は購入したものについては、購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等その資産の購入のために要した費用があればこれを含む)及びその固定資産を事業の用に供するために直接要した費用の額(据付費、調整試運転費等)とされています。また、建設・製造した固定資産については、当該資産の建設等のために要した原材料費、労務費及び経費の額並びにその資産を事業の用に供するために直接要した費用の額となっています。


(3) 減価償却の方法

 固定資産の減価償却の方法についてはいくつかの方法がありますが、医療法人が主として使用する固定資産については定額法と定率法の2つの方法があります。

 [1]  定額法

 固定資産をその使用可能期間にわたり、毎期一定額の価値減少額があるものとして計算する方法です。

 償却費=(取得価額−残存価額)×償却率×事業供用月数/12

 [2]  定率法

 固定資産をその使用可能期間にわたり、毎期一定の割合で価値が減少するものとして計算する方法です。

 償却費=(取得価額−既償却額)×償却率×事業供用月数/12


(4) 少額減価償却資産及び一括償却資産

 [1]  少額減価償却資産の取得価額の損金算入

 少額減価償却資産とは、取得価額が10万円未満または耐用年数が1年未満の固定資産をいいます。少額減価償却資産については、法人が事業供用年度においてその取得価額を損金経理した場合にはその全額が損金として認められます。また中小法人の場合、少額減価償却資産の判定が30万円未満となります。

 少額減価償却資産に該当するかどうかの判定にあたって金額要件の10万円(30万円)については明確ですが、耐用年数1年未満の判定については、同業種の他の法人における使用状況その他を参考にして法人の判断によることになります。

 なお、平成18年度の税制改正において少額減価償却資産の損金算入額に限度額が設定されました。具体的には平成18年4月1日以降に開始する事業年度からは、中小法人について取得価額30万円未満の減価償却資産について少額減価償却資産として損金に算入できる金額の合計額が年間で300万円までとなります。従って、300万円を超える場合には、その部分の資産については通常の減価償却もしくは取得価額20万円未満であるならば下記の一括償却のどちらかになります。

 [2]  一括償却資産の損金算入

 一括償却資産の損金算入とは、法人が取得価額20万円未満の固定資産を取得した場合において、少額減価償却資産の特例の適用を受けなかった資産について適用がある制度です。

 一括償却資産については、取得価額の3分の1(残存価額は0)を3年間継続して損金経理している場合にその金額が認められる制度です。一旦、一括償却を選択した固定資産については、その途中で除却や売却した場合でも最後まで継続して損金経理することが強制されます。

 償却可能限度額=取得価額×当期の月数/36


(5) 特別償却

 ○ 要件及び内容

 特別償却とは、普通償却とは区分して主に政策的に行われる減価償却です。特別償却によれば、その分早期に償却費を計上できますが、計上できる額の総額は一定ですので、あくまで税負担を繰り延べるものでしかありません。医療法人において行うことのできる特別償却には主に以下のものがあります。

A 中小企業者等が機械等を取得した場合等の特別償却
  (特別償却率:取得価額×30%)

B 情報通信機器等の特別償却(平成18年度税制改正により廃止)
  (特別償却率:取得価額×50%)

C 情報基盤強化機器等の特別償却
  (特別償却率:基準取得価額×50%)  (注)基準取得価額=取得価額×70%

D 医療用機器等の特別償却
  (特別償却率:取得価額×14%または20%)

E 特定医療用建物の割増償却
  (割増償却率:普通償却費×8%)

F 建替え病院建物の特別償却
  (特別償却率:取得価額×50%×15%)


(6) 修繕費及び資本的支出

 固定資産について修繕費を支出した場合、その金額が修繕費に該当するのか、資本的支出に該当するかによって取扱いが異なります。修繕費については一時に損金算入することができますが、資本的支出の場合には新たな資産を取得した扱いになりますので、減価償却を通じて費用化していくことになります。このように修繕費と資本的支出には大きな違いがあるためこれらの区分けを知っておく必要があります。

 [1]  意義

 修繕費については固定資産の機能が損なわれた場合等に、その機能を回復するためまたは定期的に修繕を行ってその機能を維持するために支出するものであり、資本的支出については、建物の増改築その他固定資産の機能を向上させるために支出される費用となります。


 [2]  修繕費と資本的支出の区分

   少額または周期の短い場合

 以下の要件のいずれかに該当する場合には、その内容にかかわらず修繕費として損金算入することができます。

     一の修理、改良等のために要した費用の額が20万円未満である場合

     その修理、改良等が概ね3年以内の期間を周期として行われることが既往の実績その他の事情からみて明らかである場合

   区分不能の場合

 Aの要件に該当しなかった場合において、修繕費と資本的支出の区分が明らかでない費用の額について、以下の要件に該当する場合にはこれらについても修繕費として損金算入することができます。

     その金額が60万円未満である場合

     その金額がその修理、改良等に係る固定資産の前期末における取得価額の概ね10%相当額以下である場合

     法人が継続してその費用の額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前期末における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしている場合における、その少ない金額

(注)  この特例は区分不能なものに係る判定であるので、例えば、Aの要件について30万円で明らかに資本的支出にあたる支出をした場合にこれを修繕費とすることはできない。

   被災資産

 災害を受けた資産について支出した費用のうち以下の要件に該当するものについては修繕費として経理することができ、残りの金額については資本的支出となります。

     被災資産につきその原状を回復するために支出した費用

     被災資産について支出した費用の額で修繕費か資本的支出か明らかでない金額について、法人がその金額の30%相当額を修繕費として、残額を資本的支出としている場合におけるその30%相当額

(注)  原状回復のために支出した金額とは、災害直前の簿価と災害直後の時価の差額に相当する金額をいう。


(7) その他

 [1]  中古資産の耐用年数

 法人税法における減価償却資産の耐用年数については、新品取得を前提に設定されているため、中古で取得した場合については耐用年数を新たに設定することになります。

   中古資産の使用年数が耐用年数の全てを経過している場合

 法定耐用年数×20%

   中古資産の使用年数が耐用年数の一部を経過している場合

     法人がその後の使用可能年数を合理的に見積ることができる場合

  法人が見積った年数

     法人がその後の使用可能年数を合理的に見積ることができない場合

  (法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%

(注)  算出した耐用年数が2年未満の場合は2年とし、1年未満の端数生じた場合は1年未満切捨てとなる。

 [2]  償却方法の変更

 法人が一旦選定した償却方法については、継続して適用することが原則ですが相当期間経過後で、合理的な理由があれば所轄税務署長の承認を受けて償却方法を変更することができます。この場合の償却費の金額については以下のように算定します。

   定額法から定率法へ変更した場合

  償却限度額=取得価額×定率法償却率

   定率法から定額法へ変更した場合

  償却限度額=(取得価額−残存価額)×定額法償却率

 

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