目次 事例 4


 (事例4) 注文書


注 文 書

 株式会社×○製作所 様

下記の商品の制作を注文いたします。

  商品名 ミーティングテーブル 1式

   平成22年2月1日
株式会社○○商店



取引基本契約書

 株式会社×○製作所と、株式会社○○商店は、次のとおり、家具の製作に関して、基本契約を締結します。

 第1条 ……。
 第2条 ……。
 第3条 個々の取引に係る個別契約は、注文書の発行によって成立する。
 第4条 ……。



【 解 説 】

 この文書は、いわゆる「注文書」です。注文書は、申込みの事実を証する文書ですから、契約の成立を証明するものではありません。

 しかし、あらかじめ基本契約書が作成されていて、その中で「個々の取引に係る個別契約は、注文書の発行によって成立する」と記載されていれば、注文書の交付によって当事者同士の間で、個々の家具の製作という契約が成立するということを認識、了解しているものと考えられます。したがって、その注文書は当事者間の了解により、契約の成立の事実を証明しているものと認められますから、印紙税法上の契約書に該当します。

 また、この注文書は「家具の製作」、つまり請負という課税事項の記載証明があるので、第2号に規定する「請負に関する契約書」に該当し、金額や目的物の記載(重要事項)などがあれば課税文書になります。

 このことから、印紙税の「文書課税」というのは、単にその文書に記載されている文言だけで判断するのではなく、文書の記載事項を基本として、慣習、基本契約、了解などがあるかどうか、あるとするのならば、それら了解事項等を考慮したうえで、総合的に判断するという意味であるといえます。

 ちなみに、基本契約書に記載しているような「個々の取引に係る個別契約は、注文書の発行によって成立する」ではなく、「個々の取引に際しては、注文書を発行する」「個々の個別の取引や契約については、そのつど協議する」とすれば、注文書が課税文書になることはありません。


「他の文書を引用している文書」の判断(基通4)

 印紙税の課否判定を行ううえで、例えば、ある文書の課否判定をしようとする場合において、その文書が契約書に該当するものの、課税文書に該当することの要件(重要事項といいますが、これは後述します。)の記載がないので、課税文書には該当しないようなケースが時折見受けられます。

 しかし、その文書を作成するもとになる文書、つまり、契約書である請書の前に作成する注文書や見積書等を作成している旨が課否判定対象文書である請書等に記載されており、その見積書等に、金額などの、本来であれば契約書にも記載するような事項が記載されているような場合には、それら見積書等の内容を引用することとされています。これを「他の文書を引用している」といいます。

 この「他の文書を引用している文書の判断」というのは、つまり当該見積書等の内容を引用することで、通常の課税文書に該当する契約書を作成した場合との課税のバランスを保持するという趣旨により規定されているものです。請書等と見積書等を合体させて1つの課税文書として考えるという取扱いであるということになります。

根拠法令等
*基通第4条(他の文書を引用している文書の判断)
1. 一の文書で、その内容に原契約書、約款、見積書その他当該文書以外の文書を引用する旨の文言の記載があるものについては、当該文書に引用されているその他の文書の内容は、当該文書に記載されているものとして当該文書の内容を判断する。
2. 前項の場合において、記載金額及び契約期間については、当該文書に記載されている記載金額及び契約期間のみに基づいて判断する。
(注)  第1号文書若しくは第2号文書又は第17号の1文書について、通則4のホの(ニ)又は(三)の規定が適用される場合には、当該規定に定めるところによるのであるから留意する。

*法別表第一 課税物件表
 課税物件表の適用に関する通則
 ホ 次の(一)から(三)までの規定に該当する文書の記載金額については、それぞれ(一)から(三)までに定めるところによる。
  (一)  当該文書に記載されている単価及び数量、記号その他によりその契約金額等の計算をすることができるときは、その計算により算出した金額を当該文書の記載金額とする。
  (ニ)  第1号又は第2号に掲げる文書に当該文書に係る契約についての契約金額又は単価、数量、記号その他の記載のある見積書、注文書その他これらに類する文書(この表に掲げる文書を除く。)の名称、発行の日、記号、番号その他の記載があることにより、当事者間において当該契約についての契約金額が明らかであるとき又は当該契約についての契約金額の計算をすることができるときは、当該明らかである契約金額又は当該計算により算出した契約金額を当該第1号又は第2号に掲げる文書の記載金額とする。
  (三)  第17号に掲げる文書のうち売上代金として受け取る有価証券の受取書に当該有価証券の発行者の名称、発行の日、記号、番号その他の記載があること、又は同号に掲げる文書のうち売上代金として受け取る金銭若しくは有価証券の受取書に当該売上代金に係る受取金額の記載のある支払通知書、請求書その他これらに類する文書の名称、発行の日、記号、番号その他の記載があることにより、当事者間において当該売上代金に係る受取金額が明らかであるときは、当該明らかである受取金額を当該受取書の記載金額とする。

 この通達(基通第4条)について内容を検討してみると、次のように整理されます。

(1)  文書の内容に、原契約書、約款、見積書その他当該文書以外の文書を引用する旨の文言がある場合は、その引用されている文言は当該文書に記載されているものとして判断します。

(2)  ただし、記載金額、契約期間については通則4に定めるもの以外は引用しないこととされています。

 このことを理解するために、事例を検討してみます。

 

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