目次 IV−4


4 外国勤労所得の除外(米国市民又は米国居住者)

 米国市民、又は米国居住者は、居住地に関係なく米国で全世界所得に対して課税されます。ただし、条件を満たせば、外国勤労所得のうち最高年額$85,700(2007年度)、$87,600(2008年度)までの所得を除外、更に、その外国での居住に要した費用の全部又は一部を除外又は控除することができます。

 前者の控除は、外国勤労所得の除外(Foreign Earned Exclusion)と呼ばれ、後者の除外又は控除は、外国住居費の除外又は控除(Foreign Housing Exclusion and Deduction)と呼ばれています。ここでは、駐在員の方に関係する外国勤労所得と外国住居費の除外を主に説明します。


1.適用条件

 外国勤労所得の除外の適用条件は、以下の通りです。

 (1) 外国にタックス・ホームがあること。
 タックス・ホームとは、一般的に、家族の居住地に関係なく、事業をしている場合は事業の場所、雇用されている場合は勤務地をいいます。

 (2) 外国勤労所得があること。

 (3) 以下のいずれかに該当すること。

   a. ボナファイド居住テストの条件を満たす米国市民
   b. 米国と租税条約を締結している国の国籍を持ち、ボナファイド居住テストの条件を満たす米国居住者
   c. フィジカル・プレゼンス・テストの条件を満たす米国市民、又は、米国居住者


2.外国勤労所得の額 Foreign earned income exclusion

 勤労所得は、給料、コミッション、社宅、家族手当や海外手当、およびプロフェッショナル報酬のような役務提供より生じる所得をいい、公的年金や年金は含まれません。

 また、勤労所得のうち、除外される所得は外国源泉の勤労所得が対象となります。外国勤労所得であるかどうかは、その給与等の支払場所に関係なく、役務が提供された場所になります。外国と米国で勤務した日がある場合、その労働日数で給料等を按分し、外国勤労所得を算出します(Time Basis)。

 社宅等の経済的利益については、地理的要因で源泉地が決定されます(Geographic Basis)。


3.外国住居費の除外 Foreign Housing Exclusion

 外国勤労所得が除外の条件を満たす場合、外国住居費の除外Foreign Housing Exclusionも適用することができます。

 外国住居費には、外国で居住するために必要な賃貸料、社宅(時価)、水道光熱費(電話以外)、居住用不動産と家財の保険料、礼金、家具のリース料等が含まれます。家具や不動産の購入費、個別控除できる利息や税金、減価償却費等は外国住居費には含まれません。

 また、控除できる金額は、従業員の場合は、雇用主が負担した金額および従業員が給与等から支払った金額となります。自営業者の場合、外国勤労所得から外国勤労所得の除外額と外国住居費控除(従業員でもある場合)との合計額を控除した金額が限度となります。

 外国住居費から基礎住居費(Base Housing Amount)年額$13,712(2007年度)を控除した金額が、外国住居費の除外金額となります。その年の居住期間が365日に満たない場合、基礎住居費は日額$37.57で計算されます。外国住居費の額は、地域ごとに上限額が決定されています。


4.外国勤労所得の除外の手続 Form2555

 前述のような除外又は控除を受けるには、その年の所得税申告書に「外国勤労所得申請書」Form2555〈Foreign Earned Income〉を添付します。所得から控除する順位は、外国住居費の除外又は控除、そして、外国勤労所得の除外となります。

 これらの除外および控除を適用した場合の税額計算は、通常の計算と異なります。また、外国勤労所得で除外された部分に対して支払われたとみなされる外国所得税は、外国税額控除および所得控除の計算で減額されますので、注意してください。

 期限を超えても、外国勤労所得の控除適用後に納付する連邦税がない場合等、手続により選択ができます。

 一度選択をすると、その選択は取消をするまで継続されます。取消をすると、米国税務当局の許可なく、5年間は再選択をすることはできません。

 

目次 次ページ