目次 II−2−1


2−1 所得金額 Income(米国市民又は米国居住者)

 米国市民および米国居住者は全世界課税ですので、所得金額にはその年(1月1日から12月31日)に生じたすべての所得が含まれます。外国で支払われている場合も、支払場所を問わず所得に含まれます。

 所得金額の計算は、「米国個人所得税申告書」Form1040の所得区分(例:Line7には給与所得を記入)をもとに行います。

 米国で支払われる所得は、通常、「給与所得の源泉徴収票」FormW-2やForm1099sの法定調書(例:Form1099-INT「受取利息の法定調書」)が支払者から発行されますので、それに従って所得金額をForm1040に記入します。また、海外払い等でFormW-2、およびForm1099sのような法定調書が発行されない場合も、非課税となるものを除き所得金額に含めます。


1.給与所得 Form1040 Line7

 雇用等に基づき、労働の対価として受け取る給与、報酬や経済的利益が、給与所得となります。日本と同様に、雇用主よりFormW-2が発行されますので、源泉徴収票より所得金額を記入します。

 給与所得は、給与が支払われる場所(例:日本)、又は、給与の支払者(例:日本の親会社)に関係なく課税されます。また、給与所得は、源泉徴収票が発行されない、又は、源泉徴収票に含まれていない場合でも、非課税になるものを除き、課税されます。

 日本と異なり、給与所得控除や退職所得の特別な取扱いはありませんので、給与収入が課税対象になります。


2.受取利息 Form1040 Line8a

 銀行、証券会社等の金融機関等からの受取利息が、利子所得になります。支払者より「受取利息の法定調書」Form1099-INT〈Interest Income〉が送付されますので、それをもとに所得金額を記入します。外国からの受取利息も、米国の税務上非課税でない限り利子所得に含まれます。


3.受取配当 Form1040 Line9a

 法人から受け取る分配(例:金銭、株式やその他資産)が、配当所得になります。配当は、パートナーシップ、エステイト、トラスト等を通して支払われることもあります。

 金融機関又は配当の支払者から「受取配当の法定調書」Form1099-DIV〈Dividends and Distributions〉が送付されますので、それをもとに所得金額を記入します。外国からの受取配当も、米国の税務上非課税でない限り含まれます。

 保険料の返還である生命保険契約からの配当は、ここでいう配当には含まれません。また、Form1099-DIVのBox1bに記入されている適格受取配当は、キャピタルゲインと同様に5%、又は15%の低税率で課税されます。日本法人からの配当も、要件に一致すれば適格受取配当となります。


4.州・地方住民税の還付 Form1040 Line10

 州・地方住民税の還付は、課税されることがあります。

 所得計算で税金控除として過年度に州・地方住民税を控除し、控除した州・地方住民税の還付を受けた場合には、その還付金の額を所得に含めることになります。これは、タックス・ベネフィットルール(Tax benefit rule)と呼ばれます。

 その年に実際に受け取った還付金だけではなく、超過分を還付に代えて翌年の予定納税に充当した場合も同様の取扱いになります。

 したがって、標準控除を選択した年度は、所得計算で控除の適用を受けていないので、州・地方住民税の還付を所得に含める必要はありません。還付があった場合、州や地方政府から「還付金の法定調書」Form1099-G〈Certain Government Payments〉が送付されます。


5.離婚手当 Form1040 Line11

 離婚手当は、一定の条件を満たしている場合、受取人が所得金額に含め、支払者が所得調整額として控除します。


6.事業所得 Form1040 Line12

 事業所得がある場合は、「事業所得の損益計算書」Schedule C〈Profit or Loss From Business〉を添付します。


7.キャピタルゲイン・ロス Form1040 Line13

 キャピタル資産の譲渡損益がある場合、「キャピタル損益計算書」Schedule D 〈Capital Gains and Losses〉に譲渡の明細を記入します。キャピタルロスは、キャピタルゲインとの通算後、年最高$3,000(夫婦別申告は、$1,500)まで控除できます。

 また、事業用資産の譲渡益が、キャピタルゲインとして取扱われることがあります。


8.IRAおよび年金分配金 Form1040 Line15a,16a

 個人退職年金および年金からの受取金額は、年金保険料を個人で負担した部分を除き、総所得金額に含まれます。また、積立時に優遇措置を受けている場合は、一般的に受取金額の全額が課税の対象とされます。

 年金の支払者から「年金等の支払いの法定調書」Form1099-R〈Distributions From Pensions, Annuities, Retirement or Profit-Sharing Plans, IRAs, Insurance Contracts, etc.〉が送付されますので、それをもとに所得金額を記入します。外国からの年金も、米国の税務上非課税でない限り所得に含まれます。


9.賃貸所得、ロイヤリティ、パートナーシップ、Sコーポレーション、トラスト等Form1040 Line17

 賃貸所得、ロイヤリティ、パートナーシップ、Sコーポレーション、トラスト等よりの所得がある場合、「補助的損益計算書」Schedule E 〈Supplemental Income and Loss〉を添付します。

 パートナーシップ、Sコーポレーション、トラストの所得は、「損益持分計算書」Schedule K-1がそれぞれの事業体から送付されてきますので、それに従って所得税申告書に記入します。不動産賃貸所得は、Schedule E Part1にその不動産所得の損益計算を記入します。その損失がパッシブ・ロス(受動的損失)の場合は、その年に損失をとることができないことがあります。


10.公的年金 Form1040 Line20a

 公的年金(ソーシャルセキュリティー)は、一定の金額を超えた場合に課税となります。

 公的年金の受取金額の1/2とその他所得の合計額が、申告ステイタスにより決定されるベース金額を超える場合、その受取金額の一部(最高85%)が課税されます。


11.その他の所得 Form1040 Line21

  その他の所得には、賞金、ギャンブル収入、過去に所得控除した医療費、固定資産税の返金額があります。また、外国勤労所得の除外を適用した場合には、その他の所得のマイナス項目として控除額が記入されます。

 

目次 次ページ