目次 I−3


3 米国居住者か米国非居住者かの決定

 日本と同様に、米国居住者と米国非居住者では、課税される所得と課税の方法が異なります。したがって、最初に米国居住者か米国非居住者かを決定することが重要です。

 米国税法では、その国籍により個人を「米国市民」(U.S. citizen)と「外国人」(Alien)に区分し、さらに、その居住形態により「外国人」を「米国居住者」(Resident Alien)と「米国非居住者」(Non-resident Alien)に区分しています。

 (1) 「米国市民」に対しては、市民権課税が行われます。その居住地にかかわらず、すべての所得に対して課税されることになります。これは、全世界課税と呼ばれています。

 (2) 「米国居住者」も、米国市民と同様に、国外源泉所得も含めて全世界において取得したすべての所得に課税されることになります。

 (3) 米国非居住者」は、国内(米国)源泉所得のみが課税の対象とされます。この場合、所得の種類により課税方法が異なります。また、租税条約等により税の軽減又は免除の規定が適用される場合があります。


・米国居住者の定義

 次のグリーンカード・テスト、又は、米国実質滞在テストの条件に該当する場合、外国人(Alien)は米国居住者として取扱われます。

 (1) グリーンカード・テスト Green card test
 米国永住権(グリーンカード)を有している外国人

 (2) 米国実質滞在テスト Substantial Presence test
 次の米国実質滞在テストの条件を満たす外国人

   a. その年の米国滞在日数が31日以上で、かつ
   b. その年の米国滞在日数、前年の米国滞在日数の1/3の日数、および、前々年の米国滞在日数の1/6の日数の3年間の合計日数が183日以上

 なお、日数計算は、一般的に米国入国日と米国出国日もそれぞれ米国滞在1日として取扱います。そして、その滞在日数を1/3、又は、1/6にした場合に端数が出る場合、出た端数を合計して1日に満たない場合は切捨てます。また、米国滞在中の疾病のために出国帰国できない場合の日数や、カナダおよびメキシコからの通勤の日数等は、米国実質滞在テストの米国滞在日には含まれません。


・双方居住者であるケース(日米租税条約)

 日本と米国のそれぞれの国内法により、個人が双方居住者に該当するケースがでてきます。そのような場合には、「日米租税条約」(所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約)が適用されることになります。

 日米租税条約の第4条には、租税条約上の居住者の定義が規定されています。そして、その第3項には、双方居住者(米国市民および米国永住権者を除く)がどちらの国の居住者になるかの順序が次のように規定されています(タイ・ブレイクルール)。

 a.  恒久的住居が所在する国の居住者とみなされます。双方に恒久的住居がある場合、その人的および経済的関係がより密接な国(重要な利害関係のある国)の居住者とみなされます。
 b.  a.で決定ができない場合、常用の住居が所在する国の居住者とみなされます。
 c.  b.で決定できない場合、国民である国の居住者とみなされます。
 d.  c.で決定できない場合は、両国の権限のある当局の合意により解決されます。

 

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