目次 I−1


I.米国所得税制度の概要


1 米国と日本の所得税の主な違い

 米国の個人所得税申告を理解するには、日本の所得税申告との相違を理解するのも一つの方法です。以下は、日米の主な税務上の違いです。


・個人所得申告の必要性

 日本: 給与所得者の多くの方が年末調整で所得税の課税関係を終了します。給与が2,000万円以上の高額所得等の一定の条件に該当する人のみが確定申告をします。

 米国: 年末調整なしで給与所得の源泉徴収票が作成されますので、ほとんどの給与所得者が確定申告を行います。米国の源泉徴収票は、年間の給与項目の単なる集計表に過ぎません。


・夫婦合算申告

 日本: 個人別申告です。必要な場合、夫婦は個々に確定申告を行うことになります。

 米国: 選択により夫婦の所得を合算して申告をすることができます。


・給与所得控除額

 日本: 給与収入から給与所得控除額、又は、特定支出の控除が認められています。

 米国: 給与所得控除はありません。給与収入がそのまま給与所得として課税されます。


・退職金課税

 日本: 退職所得は退職所得控除後の残額の1/2の所得に対して課税されます。

 米国: 退職金も給与所得として課税され、特別な取扱いはありません。


・申告ステイタス

 日本: 申告ステイタスという概念がありません。単一の累進税率、所得控除で税額計算がされます。

 米国: 納税者の申告ステイタスにより税率のブラケット、所得控除の限度額等が異なります。


・国籍

 日本: 海外に居住している場合、国籍が日本であるということで日本の課税を受けることはありません。つまり、市民権課税制度はありません。

 米国: 民権課税制度があり、米国市民および米国永住者(グリーンカード・ホルダー)は、居住地国を問わずすべての所得に対して課税(全世界課税)されます。

 

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