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12 インターネットビジネスのトラブルは複雑

 特定企業間をオンラインで結ぶEDI(電子データ交換)を利用したB to B(企業間取引)では、オフラインですでに取引関係にある企業間の一部の取引をオンラインで行うことが多く、特定企業間であるので相手方の素性や信用なども了知している場合が多い。

 しかし、ネットを利用したB to C(企業対消費者間取引)では、一企業が不特定多数の顧客を取引相手にするので、取引の相手方の素性がわからず、契約の成立時期、効力、当事者の認証、プライバシーの保護、メッセージの同一性等の多くの法律問題が生ずる(オープンのEDIEDIではB to Bでも同じ)。

 以下では、ネットを利用した電子商取引の法律問題を述べる。


1 どの法規が適用されるか

 インターネットには国境がないので、国際間で取引をした場合、どの国の法律が適用になるのか、国際取引における準拠法が問題である。

 準拠法は、当事者間で取決めがある場合はそれに従う(当事者自治の原則。法の適用に関する通則法7条)。それがない場合は申込発信地の国の法律が適用になる(同法10条)が、インターネットのように世界各国からの申込みが予想される取引で、個別の申込発信地の法律の適用を妥当とするかどうかは議論がある。

 そこでインターネットショッピングなどの場合は、画面上あるいは会員の約款に準拠法の定めが記載されている場合が多い。特に英文も併記しているようなサイトでは世界各国からの申込みが予想されるので、約款で準拠法を定めておくことが必須である。


2 裁判管轄

 準拠法は適用される法律の問題であるが、裁判管轄ではどこの国の裁判所で裁判を受けるかの問題である。

 万一外国で裁判を受けることになると、旅費、宿泊費、弁護士費用などの経費や、言語の問題等が生じてくるので、自分の権利を守るのに莫大な手数、時間、費用がかかることになる。

 この裁判管轄も、まず当事者間の取決めが優先される。インターネットショッピングなどの場合は、画面上あるいは会員の約款などで裁判管轄の定めが記載されていることが多い。

 国内取引であっても、隔地者間の取引において紛争が発生した場合、その解決をいずれの地の裁判所で行うかは大きな問題となる。自社の所在地で裁判が行えれば、手数費用等の面で大いに有利になることはいうまでもない。


3 適用される法律

 ネット上であってもネット外とまったく同様に法が適用される。たとえば、民法は契約の成立要件や効果などについて定めており、ネット上の契約であってもそれらが適用される。また刑事法は処罰に関する法律であるが、ネット上であっても名誉毀損や著作権侵害等があれば処罰の対象となる。またネットでは知的財産権法に抵触する可能性が高い。ビジネスモデル特許の特許権や、著作権の侵害、ドメインネームと不正競争防止法の関係などが大きな問題点となる。

 また法規のみならず業界での自主規制を定めている例が多く、これらの遵守も要求されることになる。

 

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