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8 手形の一般的注意事項

 手形・小切手(以下「手形」と略す)には、何を記載すべきか、何を記載してはならないかが厳格に法で決められている。したがって、法に定められたことが記載されていなかったり、禁じられたことが記載されていたりすると手形自体が無効になる可能性がある(要式証券性)。

 手形は、券面に記載された事項だけで債務内容が決定されるので、100万円の債務の支払いであるのに誤って手形に1,000万円と記載すれば、手形を取得した第三者に対して1,000万円を支払わねばならなくなる(文言証券性)。

 手形は、売買代金の支払いのためなど、何らかの原因関係決済のために振り出される。だとすれば、原因関係が解除されたりすれば代金を支払う必要はないはずである。しかし、手形はこれら原因関係とは切り離されており、手形を取得した第三者に対しては手形金を支払わねばならなくなる(無因証券性)。

 手形は、手形を呈示して支払請求をしなければならない(呈示証券性)。したがって、手形を紛失すると手形金請求ができなくなるし、第三者がその手形を善意取得すれば手形上の権利を失うことになる。

 手形を振り出して、6か月内に2度その支払いができないと銀行取引停止処分を受けることになる。これは以後2年間、手形交換所に加盟しているすべての金融機関と当座勘定取引と貸付の取引ができなくなるとする制裁処分であり、企業にとっては死刑判決ともいえるものである。

 手形用紙に関しては特段の法の定めはない。しかし、実際には統一手形用紙を使用したものでなければ銀行は決済物件として取り扱わない。したがって、必ず統一手形用紙を使用した手形であることが必要である。

 以下、これらを前提にして説明する。

 

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