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2.居住用財産を譲渡した場合の課税の特例

 自己の居住の用に供していた家屋およびその敷地である土地を譲渡した場合には、居住用財産の3,000万円控除や居住用財産の買換特例など譲渡所得税・住民税が軽減される特例があります。


■居住用財産の譲渡とは

 個人が自分の住んでいる家屋や敷地を譲渡した場合には、その譲渡による所得税・住民税を軽減する特例がいろいろと設けられています。これらの特例は、売却した住宅の譲渡益に税金を課税することにより新しい住宅の購入資金から、その税金分が目減りすることを防止するために設けられました。

 特例の適用が受けられる居住用財産の譲渡とは、次の譲渡をさします。


(1)特例が適用される譲渡

A 個人が、現にその居住の用に供している家屋を譲渡した場合
 Aの家屋で居住の用に供されなくなったものを、居住の用に供されなくなって3年目の12月31日までに譲渡した場合
 AまたはBの家屋と共に、その敷地である土地や借地権を譲渡した場合
 Aの家屋を取り壊し、その敷地のみを譲渡する場合、その家屋を取り壊した日から1年以内にその土地の譲渡に関する契約を締結し、かつその家屋を居住の用に供さなくなった日から3年目の12月31日までに譲渡した場合


(2)特例が適用されない譲渡

 (1)の要件を満たす譲渡でも、譲渡の相手が配偶者・直系血族・同一生計の親族・同族会社などである場合には、居住用財産の譲渡の特例の適用は受けられません。


■居住用財産の3,000万円の特別控除

 この特例は、居住用財産を譲渡した場合にその譲渡益から3,000万円(譲渡益が3,000万円以下の場合はその金額)が控除される制度です。したがって譲渡益が3,000万円以下であれば所得税・住民税は課税されないことになります。譲渡資産の所有期間の長短は問いませんが、前年または前々年にこの特例や居住用財産の買換えの特例の適用を受けている場合には、適用を受けることができません。

譲渡収入 (取得費+譲渡費用) =譲渡益
譲渡益−3,000万円=課税短期譲渡所得金額または課税長期譲渡所得金額


(1)居住期間が短期間である場合

 この特例は居住期間が短期間でも、その家屋がその人の日常の生活状況などから、生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます。ただし、次のような場合には、適用はありません。

(1)居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合

(2)自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住いである家屋の場合


(2)申告手続きについて

 居住用財産の3,000万円特別控除の特例の適用を受けるためには、その居住用財産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日までの間に、居住用財産を譲渡した年分の申告書別表第三表(分離課税用)の「特例適用条文」欄に「措法35条」と記入するとともに、次の書類を確定申告書Bに添付して確定申告しなければなりません。

(1)譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)

(2) 譲渡資産の所在地の除票住民票の写し(譲渡資産を譲渡した日から2か月を経過した日以後に発行されたものに限ります)


■居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例

 譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超える居住用財産を譲渡した場合、3,000万円の特別控除に加え、特別控除後の譲渡益に低率による分離課税が行われます。

特例が適用される場合

 この特例の適用対象となる居住用財産は、個人が有する土地や借地権、建物でその年の1月1日における所有期間が10年を超えるもののうち、次に掲げる家屋または土地等をいいます。

A…… 個人が現にその居住の用に供している家屋で国内にあるもの、ただし、居住の用に供している家屋を2以上有している場合にはそのうち主として居住の用に供していると認められる一の家屋に限られます。

B…… Aの家屋でその個人の居住の用に供されなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるもの。

C…… AまたはBに掲げる家屋の敷地の用に供されている土地または借地権。

D…… Aの家屋が災害により滅失した場合において、引き続き所有していたとしたならばその年の1月1日における所有期間が10年を超えることとなるその家屋の敷地の用に供されていた土地等(災害があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に譲渡されるものに限られます)

 

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