5.事前確定届出給与
 第22回 5−4 届出額と支給額が異なる場合
掲載日:08/07/22

1)届出どおりの支給

 事前確定届出給与は、その要件として、支給時期、支給金額が事前に確定しており、実際にその定めどおりに支給されることを求めています。

 したがって、税務署長に届け出た支給額と実際の支給額とが異なる場合には、たとえ届出額の範囲内の支給であっても、原則としてその支給額の全額が損金不算入となります(法人税法基本通達9−2−14)。


 支給の実績を問わず届出のみを要件とするならば、あらかじめ届出だけはしておいて、利益の多寡に応じて実際の支給額を決定するといった利益調整目的のための「損金枠の事前確保」に利用されるおそれがあるという懸念も、届出どおりの支給を求める理由になっているものと考えられます。


 この場合、事前確定届出給与が複数回あるとき、届出どおりに支給が行なわれたかどうかの判定を、個々の支給ごとにすべきなのか、あるいはすべての支給を単位としてすべきなのかという問題があります。このように支給が複数回にわたる場合、届出どおりに支給されたかどうかは、原則としてその職務執行期間を一単位として判定することとされています(平成18年12月公表の国税庁「役員給与に関する質疑応答事例」)。

 つまり、複数回の支給のひとつでも届出どおりの支給がされなかった場合には、原則としてその職務執行期間内のすべての支給額が損金の額に算入されないことになります。


2)事業年度をまたぐ場合

 ただし、国税庁は、平成18年12月公表の「役員給与に関する質疑応答事例」において、以下のような事例をあげています。

 当社(年1回3月決算)では、平成18年6月26日の定時株主総会において、取締役Aに対して、定期同額給与のほかに、同12月25日および平成19年6月25日にそれぞれ300万円を支給する旨の定めを決議し、届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
 この定めに従い、当社は、平成18年12月25日には300万円を支給しましたが、平成19年6月25日には、資金繰りの都合がつかなくなったために、50万円しか支給しませんでした。
 この場合、平成18年12月25日に支給した役員給与についても、損金の額に算入されないこととなるのでしょうか。

 これに対して、その職務執行期間内におけるすべての支給が定めどおりに行われたかどうかにより判定することを原則としつつも、以下の理由により、2回目の支給額のみを損金不算入として取り扱って差し支えないとしています。

 3月決算法人がその事業年度(平成19年3月期)中は定めどおりに支給したものの、翌事業年度(平成20年3月期)において定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度(平成19年3月期)の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度(平成20年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱って差し支えないものと考えられます。

  届出単位 届出=支給 事業年度 損金判定
1回目(H18.12/25) H18.6/25からの職務
執行期間に係る届出
当事業年度 損金算入
2回目(H19. 6/25) × 翌事業年度 損金不算入

 ちなみに、質疑応答においては、事例のケースとは逆で、最初の支給(平成19年3月期中の支給)が定めどおりでなく、2回目の支給(平成20年3月期中の支給)が定めどおりである場合は、これらの支給額全額が損金不算入になるとしています。


3)全額支給しなかった場合

 事前確定届出給与として届出を行なったものの、支給を一切しなかった場合には、支給金額がゼロであるため損金不算入となる金額もゼロとなり、課税所得への影響はありません。


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