3.役員給与の税務上の取扱い
 第10回 3−2 役員給与の取扱い
掲載日:08/04/22

1)役員給与の損金不算入

 改正後の法人税法34条は「役員給与の損金不算入」という題目になっており、役員給与は原則として損金不算入となるものと捉えることもできます。損金算入できるものの範囲を限定し、それ以外のものが損金不算入になるというもので、その構成は以下のようになっています。

(1) 損金算入を認める
3類型
[1] 定期同額給与(退職給与、S・O、使用人兼務役員の使用人給与を除く。以下[2][3]において同じ)(法人税法34条1項1号)
[2]事前確定届出給与(同34条1項2号)
[3]利益連動給与(同34条1項3号)
(2)過大役員報酬 役員に対する給与のうち不相当に高額な部分の金額は損金不算入(同34条2項)
(3))隠ぺい、仮装 事実を隠ぺいし、仮装して経理することにより支給する給与は損金不算入(同34条3項)
 ※S・O=ストック・オプション

 まず、役員給与のうち、事実の隠ぺい、または仮装するなどの不正経理によって支給されるものは損金不算入となります。つぎに、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与に該当しない役員給与(退職給与、ストック・オプションによるもの、使用人兼務役員の使用人分給与を除く)が損金不算入とされ、3類型の要件を満たす給与であっても不相当に高額な部分の金額は損金不算入となります。


2)役員退職給与の損金経理要件の廃止

 改正前において、役員退職給与は「損金経理」が損金算入要件となっていました。役員退職給与については、(1)過去の勤労に対する対価の後払い=報酬の後払いとしての性格と、(2)在任期間中の功労に対する褒賞=利益の分与としての性格を持ち、(1)であれば損金性あり、(2)であれば損金性なしという考えのもと、その判断を法人の損金経理という行為に委ね、意思表示を求めたものだったといえます。

 会社法上、役員退職給与も職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益に該当するため、会社法361条の承認の対象になるもとのされており、税制も役員給与関連の規定整備にあたり、平成18年の税制改正において、役員退職給与の損金経理要件を廃止しています。

 法人税法上、損金経理が要件とされるものは、優遇措置に関するものと引当金や減価償却などの内部計算に関するものであり、そもそも役員退職金は外部に支払われるものですから、損金経理要件など必要ないとの考え方も可能で、退職という事実に基づき株主総会で適法に決議がされ、債務として確定しているのであれば、あとは「恣意性の排除」という点のみが重要であり、支給額が適正かどうかの判定だけすれば足りるものともいえます。

 ※上記の取り扱いは、平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。


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