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信託最新情報レポート

自己株式と信託
(2017年1月)
1 自己株式を信託受益権に転換している場合

 自己株式は便利な相続・事業承継のツールです。相続税の納税資金のために、相続税の申告期限から3年以内に、相続した株式を発行会社に自己株式として買い取らせると、譲渡代金にはみなし配当が適用されず、株式譲渡所得のみですませる特例が準備されています(措法9の7)。事業を承継しない相続人から自己株式を買い取れば、後継者の支配権の確保と遺産分割の問題が同時に解決できるわけです。

 さて、今回はこの株式が信託受益権に転換されている場合の会社法と税法の問題を考えてみましょう。仮に、オーナー株主が自益信託を設定して自社株を受託者に信託しているとします。そしてオーナー経営者に相続が発生し、受益権を相続人が承継したとしましょう。この場合に、相続人から受益権を会社が買い取ったら、それは自己株式の買い取りになるのでしょうか。

2 会社法は想定していない

  自己株式の買い取りになるとすれば、会社法上において矛盾が生じます。本来は自己株式を買い取ると、発行済株式が減少し、議決権を行使することはできないはずです。配当も出来ません。しかし受益権を発行会社が買い取っても、株式は受託者が株主として保有したままです。買い取りについて株主総会(会社法162)は必要ありませんし、配当可能利益の制限(会社法461)も発動しません。会社法は、自社株が受益権になっている場合の買い取りを想定していません。

3 税務上も解消できない疑問がある

 税法はどうでしょうか。発行会社に受益権を譲渡した場合に、株主にとっては株式の譲渡対価になるのか否か、譲渡対価であればみなし配当になるのかという問題です。

 ここは今現在、結論が出せません。受益権の譲渡対価にみなし配当が適用されるかは疑問です。受託者が株主のままであって、資本の払い戻しとは言えないからです。さらに株式の譲渡対価とすることにも問題があります。仮に株式の譲渡対価になるのではれば、自己株式の買い取りによるみなし配当課税を避けるために、信託を節税手法として使えることになってしまいます。

4 実務での解決は容易

 ここまでは理屈の問題を論じたのであって、実務では大きな問題だとは言えません。受託者が保有する株式を直接発行会社に譲渡するか、信託を解消してからあらためて自己株式を買い取ってもらえばよいわけです。

 柔軟性のある財産管理制度としての信託は、従来の手法を妨げることなないのですが、自己株式に関しては今後の課題と言えるでしょう。また、仮にこのような問題が生じても信託を終了するなどすれば解決できるわけですから、むしろ状況によって柔軟に対応できる信託のメリットが認識できる事例だとも言えるでしょう。


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