不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の注意点
2015年8月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の注意点をご紹介したいと思います。


 平成27年4月1日から直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(以下、「結婚・子育て資金の非課税」)が導入されました。

 以前から直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(以下、「教育資金の非課税」)の規定がありましたが、両者の規定は贈与者(父や祖父)が死亡したときの取り扱いで異なる部分があります。

 相続対策として取り入れる場合には注意が必要となりますので、相違点を解説します。


1.各制度の相違点

 教育資金の非課税と結婚・子育て資金の非課税は、下記のような相違点があります。

  教育資金の非課税 結婚・子育て資金の非課税
非課税限度額 1人1,500万円 1人1,000万円
適用期間 平成25年4月1日〜
平成31年3月31日
平成27年4月1日〜
平成31年3月31日
受贈者の年齢制限 30歳未満 20歳以上50歳未満
年齢制限前に贈与者が
死亡した場合
相続税・贈与税課税なし 管理残額は相続税課税


2.贈与者が死亡した場合の取り扱い



【教育資金の非課税】
父甲から子Aへ800万円を贈与 相続税への持ち戻しはなし
贈与税での課税もなし

→教育資金の非課税においては、教育資金の非課税として拠出した金額(800万円)から教育資金として支出した金額(300万円)を控除した残額(500万円)があるとしても、相続税に加算する特例規定はありません。

【結婚・子育て資金の非課税】
父甲から子Bへ800万円を贈与 未使用分となる500万円を
相続税の課税価格に算入する

→結婚・子育て資金の非課税においては、結婚・子育て資金の非課税として拠出した金額(800万円)から結婚・子育て資金として支出した金額(300万円)を控除残額(500万円)がある場合、その残額をその贈与者から相続または遺贈により取得したものとみなして、相続税の課税財産に加算することとなります。(措法第70条の2の3第10項)


 したがって、相続対策の対象となる人が高齢の場合で、相続発生まで時間があまりないような場合、教育資金の非課税は相続対策の効果が見込めますが、結婚・子育て資金の非課税は相続税への持ち戻しとなる可能性も考慮する必要があります。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所