不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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6階建て賃貸共同住宅の敷地について更正の請求で広大地が是認された事例
2014年11月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は6階建て賃貸共同住宅の敷地について更正の請求を行ったところ、広大地として是認された事例をご紹介します。


 今回の、更正の請求事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は○県△駅より徒歩25分程度、指定容積率200%、地積約2,000平方メートル上に、被相続人の土地の有効活用としての6階建て賃貸共同住宅(RC造・平成17年築)が建っています。評価対象地は郊外の幹線道路沿いに存し、周辺には店舗、事業所、倉庫等(以下、店舗等と呼ぶ。)を中心に一般住宅、賃貸共同住宅、未利用地等も散見される混在地域です。

相続時点 平成25年
土地面積 約2,000平方メートル
建物 RC造陸屋根6階建
共同住宅(平成17年築)
延床面積 約2,500平方メートル
用途地域 準工業地域 容積率 200%
最寄駅 徒歩約25分


≪本件におけるポイント≫

 評価対象地が広大地に該当するかどうかは、以下のポイントを課税庁に説明する必要があります。

 まず(1)賃貸共同住宅の敷地として利用されていることが「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」に該当するか否か、次に(2)評価対象地の存する地域(以下、近隣地域と呼ぶ。)の標準的使用が店舗等として利用することか否か、の2つです。


<(1)について>

 広大地に該当しない例示として「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」等が掲げられていました。また、平成23年4月21日の裁決事例では賃貸共同住宅の敷地として有効利用されている敷地は地域の標準的な使用形態であると認められ、広大地には当たらないと裁決されました。

 評価対象地は相続時点現在、6階建ての賃貸共同住宅の敷地として利用されており、一見すると広大地に該当しないように思えます。

 しかし、当事務所の見解として、標準的使用」とは、その地域における価格水準を形成している使用方法を言うのであり、また、(1)の「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」の「有効利用」とは、鑑定評価基準の「最有効使用」を意味するものと考えています。そしてこの「最有効使用」とはその不動産(土地)の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用、換言するならば、当該土地を売りに出した場合に、買主が購入後に採用すると想定されるいくつかの土地利用の内、最も高い価格を提示できる使用方法をいうものとされています。ただし、個人的な事情による使用方法は最有効使用の概念から除外するものとされています。賃貸共同住宅の敷地が近隣地域の標準的使用または最有効使用となり得るのは、都心の駅前等で超高度利用が可能な地域(容積率400%以上)等で、かつ、賃貸需要が非常に旺盛で、新規に土地を取得して賃貸物件を建設しても採算が成り立つ程の高い賃料収入が見込める地域に存する土地のみであると考えられます。

 それに比べて、評価対象地は駅からは遠く、超高度利用ができるほど格別に優れた容積率を有しているとは言えず、かつ、高度利用する需要もありません。また、現況の使用方法(賃貸共同住宅の敷地)は既に所有している遊休地の有効活用であることから土地に対する投資額がなく、共同住宅の建設費のみを回収すれば投資採算が取れ、さらに相続税・固定資産税対策にも繋がることから建設したものであり、このような使用方法は被相続人の個人的な事情によるものと判断できます。実際に周辺の賃貸共同住宅の敷地の売買動向を調べたところ、いずれも地主の土地の有効活用として建てられたものであり、第三者が土地から取得して賃貸共同住宅を建設している事例は見受けられませんでした。これらを踏まえて、当事務所において賃貸共同住宅の敷地としての利用方法は、地域の標準的使用または評価対象地の最有効使用になり得ないと判断しました。


<(2)について>

 評価対象地は店舗等が連たんする郊外の幹線道路沿いに存するが、近隣地域の標準的使用が店舗等敷地として利用することか否かというところが納税者と課税庁との争点になると思われます。そこで当事務所において同幹線道路沿いの売買事例を広範囲にわたり全て調べたところ、戸建分譲素地として売買された事例を複数(約10件)確認できました。一方、評価対象地周辺の店舗等敷地について調査をしたところ、これらの店舗等敷地は旧来から所有する地主の遊休地の有効活用で店舗等を建築されたものであり、第三者が土地から取得して店舗等を建築している事例は見受けることができませんでした。つまり、周辺の取引事例等から、近隣地域は幹線道路沿いに存することから店舗等として利用する賃貸需要は見受けられるものの、土地から買って店舗等として事業経営又は賃貸経営するほどまでの投資採算が取れる地域でないことが分かります。これらを踏まえて、地域の標準的使用を一般住宅地、評価対象地の最有効使用を戸建分譲素地と判断しました。そして、その旨等の意見を記した広大地調査報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断され、是認されました。

 これまでの当事務所主催セミナーや当レポートにおいても、本件更正請求事案のように、相続時点現在において、賃貸共同住宅の敷地として利用されている土地や幹線道路沿いに存する土地が広大地評価として認められた事例をご紹介して参りましたが、いずれのケースも、評価対象地の周辺の利用状況や売買事例、市況等を細かく調査し、評価対象地が広大地である根拠をしっかりと明示・主張できた結果であると思います。こうした土地につき広大地評価が認められるか否かについては、納税者側の土地評価の専門的な知識を取り入れた説明能力に懸かっていると言わざるを得ません。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についてのご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外の広大地案件についても対応しております。

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