不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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平成26年度都道府県地価調査
2014年9月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、9月19日に発表になりました平成26年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。


 「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成26年は全国21,740地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示区域内にある31地点は調査を休止しました。

 調査全体の概要としましては、平成25年7月以降の1年間の地価は、全国平均では、住宅地、商業地ともに依然として下落をしているものの下落率は縮小傾向を継続し、三大都市圏平均では、住宅地が上昇に転換し、商業地は昨年に引き続き上昇し、上昇率は拡大しています。上昇地点数の割合は全国的に増加し、特に、三大都市圏では、住宅地の約2分の1、商業地の約3分の2の地点が上昇しました。一方、地方圏では、住宅地、商業地ともに上昇地点は増加していますが、依然として8割弱の地点が下落しています。

 全国での上昇率順位を見てみると、住宅地は上位10地点のうち8地点がいずれも岩手県、宮城県、福島県で占められていたのに対し、商業地では、上位10地点のうち6地点が東京都、大阪府となっています。

 以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。

地域別変動率表
(単位:%)
住宅地 商業地
平成25年 平成26年 平成25年 平成26年
全 国 △1.8 △1.2 △2.1 △1.1
三大都市圏 △0.1 0.5 0.6 1.7
東京圏 △0.1 0.6 0.6 1.9
東京都 0.5 1.3 0.7 2.7
神奈川県 0.1 0.4 0.9 1.3
埼玉県 △0.7 0.0 △0.8 0.2
千葉県 △0.7 △0.1 △0.4 0.4


≪住宅地≫

 東京23区は、全体で1.9%上昇となりました。景況感の回復等から住宅地への需要が回復し下落を示す地点はなくなり、全ての区が上昇となっています。また、生活利便性が良好な住宅地では希少性が一段と高まり上昇基調を強めています。特に、千代田区は5.5%上昇、中央区は7.5%上昇、港区5.4%上昇と中心区では高級住宅地への需要が強く5%を超える上昇となっています。なお、オリンピック・パラリンピック開催決定に伴うインフラ整備への期待等から中央区、江東区では湾岸部でのマンション素地需要が堅調となっています。

 神奈川県は、全体で0.4%上昇しており、その中でも、川崎市、横浜市においては、いずれも都心への交通利便性が良好であることから、住宅地への需要は堅調で全ての区で上昇となりました。特に、横浜市では東京都心への接近性・交通利便性が良好な東横線沿線の港北区は2.7%上昇、横浜市営地下鉄沿線の都筑区は2.7%の上昇となりました。また、川崎市では再開発事業の進展などから住宅地需要が堅調な中原区は2.8%上昇と上昇基調を続けております。

 埼玉県は、全体で±0%と横ばいとなっております。東京都心への交通利便性が良好な駅徒歩圏を中心に需要が堅調で上昇地点が増加し、岩槻区を除き各区で上昇となりました。特に大宮区2.8%上昇、北区2.0%上昇と、JR沿線での駅徒歩圏住宅地では需要が強く2%を超える上昇となりました。

 千葉県は、全体で▲0.1%となりました。JR沿線の優良住宅地で需要の回復が見られ、若葉区、美浜区を除く各区で上昇となっています。なお、美浜区は液状化被害の影響もありやや高い下落率となっています。


≪商業地≫

 東京都23区は、全体で3.2%上昇となりました。再開発等の進展、消費動向の回復に加え、好調なマンション素地需要等を反映し、全ての区が上昇となりました。店舗では、消費動向の回復から店舗需要が堅調で、また、外国人観光客の復調が見られ、中央区は604%上昇、港区は4.9%の上昇、新宿区は3.7%の上昇、渋谷区は4.6%と上昇基調を強めています。特に、銀座、表参道等の競争力が強く商業集積の高い地域は、店舗賃料に底入れ感が見られる中、再開発計画も予定されるなど繁華性の向上が見込まれています。

 神奈川県は、全体で1.3%上昇となりました。その中でも横浜市は2.2%上昇しており、再開発の進展や根強いマンション素地需要から全ての区で上昇となりました。

 埼玉県は、全体で0.2%上昇となりました。その中でも、さいたま市は2.2%上昇しており、特に大宮駅周辺では企業の移転・集約需要ニーズにより駅西口にオフィス需要が根強く、また、個人投資家のニーズも堅調で上昇基調を強めています。

 千葉県は、全体で0.4%上昇となりました。その中でも、千葉市は0.3%上昇しており、商業地の価格水準が低下したことから、生活利便性が良好な地域では、マンション素地を中心に需要が見られ下落から上昇に転じました。

 以上、前回の地価調査に比べ、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えもあって住宅地及び商業地ともに都道府県全てで下落率縮小や上昇率の拡大等が見られました。この堅調な住宅需要を背景に商業地をマンション用地として利用する動きが全国的に見られるなど、現在までマンション業者が触手しなかった土地であっても、立地条件等によっては、マンション業者の需要が見込まれるような事象が生じる可能性がありますので、広大地の判定に際して、今後はさらに新築マンションの建設動向にも十分ご注意下さい。






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