不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
レポート一覧はこちら

負担付贈与の注意点
2014年8月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は、「負担付贈与」の注意点についてご紹介したいと思います。ぜひ「負担付贈与」を利用して節税対策をご検討ください。


 親が所有するアパートを子供に贈与するとき、そのアパートの係るローンも一緒に負担させる取引を「負担付贈与」と言います。この「負担付贈与」は通常の贈与と異なる部分がありますので、その注意すべきポイントをご紹介させていただきます。


1.負担付贈与の概要

 収益物件を複数所有する親X(55歳)は、その所有するアパートの1棟を子供A(30歳)に贈与します。その際、そのアパートに係るローンを子供Aに支払わせることにしました。


2.所得税、相続税の節税

 当該アパートの不動産所得を1年間で500万円、15年間で7,500万円と仮定した場合、この所得の帰属を子供に移転することで、所得税や相続税を節税することができます。




3.課税関係の注意点

 子供Aは、アパートを取得すると同時に、ローンも引き継ぐことになるため、差額となる純財産に対して贈与税が課せられます。また、親Xのアパートローンを子供Aが引き受けることになるため、親Xはローン相当額の利益を受けたと考え、所得税(譲渡所得税)の課税関係が発生します。



4.アパートの時価について

 通常の贈与では、アパートの評価額は「固定資産税評価額×70%」で計算します。しかし、「負担付贈与」の場合、アパートの評価額は「通常の取引価額」、すなわち「時価」で評価します。

 不動産鑑定における時価の評価方法としては、原価法、収益還元法(建物残余法)等の方法を基に計算しますが、実務においてアパート等の建物の「時価」を自力算定することは困難であるため、「帳簿価格」を時価とみなして負担付贈与を処理しているケースもあるかと思います。

 しかし、「帳簿価格」が「時価」と乖離している場合、納税者様が負担する贈与税が過大になるケースもあります。

 乖離のリスクを見極めるひとつの目安として、建物の築年数を参考にするとよいでしょう。

 建物の築年数が浅ければ「帳簿価格」と「時価」の乖離が大きくなる可能性があり、築年数が経過して耐用年数程度の年数が経過している場合には、「時価」との乖離は小さくなります(下図参照)。



5.具体的な贈与税額

 アパートの時価を5,000万円、帳簿価格を6,300万円、借入金の未返済額を4,500万円として、贈与税を計算すると下記のようになります。



 「帳簿価格」を時価とみなして計算した場合、贈与税が高額になり提案を諦めてしまうのが一般的だと思いますが、鑑定評価の時価を採用することにより、大幅に贈与税を節税できるメリットがあります。


6.まとめ

 「負担付贈与」を行う場合、贈与税の課税関係だけでなく所得税の課税関係にも注意し、さらには、アパートの評価額は固定資産税評価額ではなく「時価」で計算しなければなりません。当事務所では、建物等の時価を算定する鑑定評価も行っており、適正な「時価」を鑑定することで納税者様に大きな節税効果をご提供できる可能性があります。評価額の概算やお見積り等につきましては、お気軽にご相談いただければと思います。






▼ 広大地評価・判定の詳しい情報はこちらをクリック! ▼
沖田不動産鑑定士・税理士事務所