不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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賃貸共同住宅の敷地について更正の請求で広大地が是認された事例
2014年5月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうございます。
今回は4階建て賃貸共同住宅の敷地について更正の請求を行ったところ、広大地として是認された事例をご紹介します。


 今回の更正の請求事案の事実事項を確認しますと、評価対象地は都内某駅より徒歩10分圏内、指定容積率200%、地積約1,500平方メートル上に、被相続人の土地の有効活用としての4階建て賃貸共同住宅が(RC造・平成元年築)建っています。評価対象地の周辺には一般住宅のほか、賃貸共同住宅も多く見られる地域です。

相続時点 平成24年
土地面積 約1,500平方メートル
建物 RC造陸屋根4階建共同住宅(平成元年築)
延床面積 約1,500平方メートル(実効容積率約100%)
用途地域 第一種中高層住居専用地域 建蔽/容積率 60%/200%
最寄駅 徒歩約10分

≪本件におけるポイント≫

 評価対象地が広大地に該当するかどうかは、以下のポイントを課税庁に説明する必要があります。

 まず(1)賃貸共同住宅の敷地としての利用方法が地域の標準的な使用方法に合致しないこと、次に(2)分譲マンション適地に該当しないこと、の2つです。

<(1)について>

 平成16年6月29日付の「資産評価企画官情報第2号」では、広大地に該当しない例示として「現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地」等が掲げられていました。このため、賃貸共同住宅の敷地は広大地に該当しないという認識が一般的となっており、また、平成23年4月21日の裁決事例では賃貸共同住宅の敷地として有効利用されている敷地は地域の標準的な使用形態であると認められ、広大地には当たらないと裁決されました。

 これらを本件にあてはめると、評価対象地は相続時点現在、4階建ての賃貸共同住宅の敷地として利用されていることから、一見すると広大地に該当しないように思えます。

 しかし、当事務所の見解として、「標準的使用」とは、その地域における価格水準を形成している使用方法を言うのであり、評価対象地のように、既に所有していた土地の有効活用としての現況の使用方法は、あくまで被相続人の個人的な事情によるものです。(2012年2月のオフィスレポート参照

 賃貸共同住宅の敷地が地域の標準的使用又は最有効使用となり得るのは、都心の駅前等で超高度利用が可能な地域等、賃貸需要が非常に旺盛で、新規に土地を取得して賃貸物件を建設しても採算が成り立つ程の高い賃料収入が見込める地域に存する土地のみであると考えられます。

 それに比べて本件評価対象地は都内に存するものの、超高度利用ができるほど格別に優れた容積率を有しているとは言えず、また、近隣に存する賃貸共同住宅の敷地の売買動向を調べたところ、いずれも地主の土地の有効活用として建てられたものであり、賃貸共同住宅を建設することを前提に土地取引が行われた事例を見受けることはできませんでした。

 これらを踏まえて、当事務所において賃貸共同住宅の敷地としての利用方法は、地域の標準的使用になり得ないと判断しました。

<(2)について>

 分譲マンション業者は、一般に、最寄駅から徒歩10分圏内で高度利用が可能な大規模地求めますが、評価対象地は徒歩10分圏内の大規模地であり、一見すると分譲マンション適地ととれるかもしれません。しかし、評価対象地について調べてみたところ、日影規制の関係から利用できる容積率が150%程度と指定容積率を十分に消化できないことが分かりました。この程度の容積率では高度利用を求める分譲マンション業者からの引き合いは弱いものと考えられます。また近隣における大規模地の売買動向を調べたところ、開発許可を要する大きな土地が売却後、戸建分譲地となっている事例を複数見つけることが出来ました。これらを踏まえて、地域の標準的使用を一般住宅地、評価対象地の最有効使用を戸建分譲素地と判断しました。

 そして、その旨等の意見を記した広大地調査報告書を作成・添付の上、更正の請求を行った結果、税務上の広大地に該当すると判断され、是認されました。

 これまでの当事務所主催セミナーや当レポートにおいても、本件更正請求事案のように、相続時点現在において、賃貸共同住宅や貸店舗等の敷地として利用されている土地について、広大地評価が認められた事例をご紹介して参りましたが、いずれのケースも、評価対象地の周辺の利用状況や売買事例、市況等を細かく調査し、また、課税庁側に対して、評価対象地の存する地域の標準的使用方法が一般住宅地であり、その他の要件(公共公益的施設用地を要するか等)を含め、評価対象地が広大地である根拠をしっかりと明示・主張できた結果であると思います。

 しかしながら、前述の平成23年4月21日付裁決事例のように、課税庁側が未だに賃貸共同住宅が周辺にある=「標準的使用」、かつその土地上に賃貸共同住宅が建っている=「有効利用されている」という誤った解釈をしている現状においては、こうした土地につき広大地評価が認められるか否かについて、納税者側の土地評価の専門的な知識を取り入れた説明能力に懸かっていると言わざるを得ません。

 当事務所では、先生方が既に申告を済まされた案件についてのご相談も受け付けております。首都圏内はもちろん、首都圏以外の広大地案件についても対応しております。お気軽にご連絡ください。






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