不動産鑑定士・税理士 沖田豊明の広大地評価レポート
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過小宅地の評価
2014年4月

いつも当レポートをご愛読頂き、ありがとうざます。
今回は、 所謂「過小宅地」の評価について取り上げます。


 一般的に、過小宅地に建物を建築する場合、その敷地規模・形状から、建物の配置に工夫が必要となり、建築コストも割高となります。対象地が住宅地域に存する過小宅地の場合、駐車場の配置や庭等の有無、建物の間取り等が制限され、居住の快適性を阻害します。また、対象地が商業地域に存する過小宅地の場合、基準容積率の未消化、建物の間取り、エレベーターの設置等が制限され、高度利用を前提とする商業地の場合、収益性が阻害されます。

 このような過小宅地を評価する場合、財産評価基本通達における原則評価(奥行価格補正率や奥行長大補正率等)のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く、市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます。

 よって、このような要因を反映させるため、利用価値が著しく低下している宅地として10%の評価減ができるものと考えられます。

 さらに、過小宅地の利用価値の低下の程度が、10%の評価減のみでは反映しきれない程に大きい場合には、以下のような評価も認められる余地があるものと考えられます。では、事例を挙げて検討しましょう。

(事例)

 上記のようなケースの場合、法律上は建物の建築が可能であったとしても、物理的には建物を建築することは不可能であると考えられます。つまり、このような土地は宅地としての利用はできず、建物を建築することを前提とした市場価値はないものと認められることから、実際の市場価値(時価)が財産評価基本通達の原則的な評価額を大きく下回ることがあります。

 この場合奥行価格補正率及び奥行長大補正率等のみでは、建物を建築することができないことによる減価が評価上反映されていないので、財産評価基本通達27−5(区分地上権に準ずる地役権の評価)の規定のうち「家屋の建築が全くできない場合」の規定を準用し、50%又は借地権割合(本ケースでは60%)のいずれか高い方の割合を評価減できる余地があると考えられます。

 具体的には、7,200,000円×(1−0.6)=2,880,000円と評価します。

 ただし、過小宅地は相続税の財産評価基本通達上、明確に定められた定義はなく、対象地が存する地域の標準的な画地規模の土地と比較して相対的に判断されるものと考えられます。

 したがって、物理的に建築が可能であるか否かは、地域の他の土地の利用状況や対象地の個性等を反映して、総合的に判断する必要があり、そのためにはその地域における標準的な地上建物の用途、用途地域・建蔽率・容積率・各種斜線制限・日影規制などの各種法規制、土地の個別的な要因(規模、形状、地勢、地盤の強弱など)の調査が欠かせないものとなります。また、これらの調査結果を踏まえた上で、対象地上に合理的に利用可能な建物の建築ができるか、また、その建物は地域の標準的な建物に比べて同程度の効用を発揮しうるものであるのかを想定し検討する必要があります。

 例えば地積60平方メートルの土地は大都市においては標準的画地規模と判断される場合がある一方で、地方においては過小宅地に該当する場合があります。

 また、商業地内等の過小宅地においては、建築可能な建物の床面積が狭小となることにより、エレベーターの設置が不合理になり(各階の床面積が狭いことから、エレベーターを設置してしまうとほとんど使用できる床部分がなくなってしまう)、エレベーターを設置せずに使用できる3階建程度の建物しか建築できないことから、法律上利用可能な容積率を全く消化できない場合等も考えられます。

 このように、過小宅地の判定には不動産についてのやや専門的な知識と綿密な調査が欠かせず、かつ、税務署に対してなぜ著しい利用価値の低下があるのかを意見書等により説明する必要が生じます。

 ただし、必ずしも不動産の専門的な知識がなくとも、このような建物の建てられない(もしくは建築できる建物の効用が著しく劣る)土地について、相続税評価額が割高であるということは、相続人様のお話や、一般常識的な感覚でお気づきになるものと思います。本レポートで取り上げた過小宅地に限らず、特殊な事情のある土地について、相続税評価額が割高であると感じられた際にはぜひお気軽にご相談ください。不動産の各種法規制の調査や、建物の建築想定などを行うことにより、評価減の余地があるかも知れません。






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