2013年9月
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今回は、9月20日に発表になりました平成25年の「都道府県地価調査」についてご紹介したいと思います。 |
「都道府県地価調査」とは、国土利用計画法による土地取引の規制を適正かつ円滑に実施するため、国土利用計画法施行令第9条に基づき、都道府県知事が毎年1回、各都道府県の基準地(平成25年は全国21,989地点)について不動産鑑定士の鑑定評価を求め、これを審査、調整し、一定の基準日(7月1日)における正常価格を公表するものです。これは、国が行う地価公示(毎年1月1日時点)とあわせて一般の土地取引の指標ともなっています。尚、原子力災害対策特別措置法により設定された警戒区域等にある31地点は調査を休止しました。
東日本大震災の被災地における土地への需要は被災の程度により差が見られ、特に岩手県及び宮城県では、浸水を免れた高台の地区や被害が軽微だった地区等において、被災住民の移転需要や復旧事業関係者の土地需要などから上昇地点が増加し、一方、海岸部では需要減退から引き続き下落する地点が見られました。福島県では、帰還困難区域等の住民による同区域外への移転需要等の高まり等により住宅地等を中心に上昇地点が増加し、同区域等周辺市町村で下落率は縮小しています。
調査全体の概要としましては、平成24年7月以降の1年間の地価は、全国平均では依然として下落しているものの下落率は縮小傾向が継続し、三大都市圏平均では、住宅地はほぼ横ばいとなり、商業地は上昇に転換しています。上昇地点数の割合は全国的に増加し、特に、三大都市圏では、住宅地の約3分の1、商業地の約2分の1の地点が上昇しました。一方、地方圏では、9割弱の地点が下落しています。
全国での上昇率順位を見てみると、住宅地は上位10地点のうち9地点がいずれも岩手県、宮城県、福島県で占められていたのに対し、商業地では、上位10地点のうち6地点が大阪府(4位〜7位・9位・10位)となっています。
以下では、東京圏の住宅地、商業地における地価動向を見ていきたいと思います。
地域別変動率表
(単位:%) |
住宅地 |
商業地 |
平成24年 |
平成25年 |
平成24年 |
平成25年 |
全国 |
△2.5 |
△1.8 |
△3.1 |
△2.1 |
三大都市圏 |
△0.9 |
△0.1 |
△0.8 |
0.6 |
東京圏 |
△1.0 |
△0.1 |
△0.9 |
0.6 |
東京都 |
△0.6 |
0.5 |
△0.8 |
0.7 |
神奈川県 |
△0.7 |
0.1 |
△0.5 |
0.9 |
埼玉県 |
△1.7 |
△0.7 |
△2.0 |
△0.8 |
千葉県 |
△1.4 |
△0.7 |
△1.6 |
△0.4 |
≪住宅地≫
東京23区は、全体で0.5%上昇となりました。住宅ローン減税等の政策効果により戸建住宅、マンション販売が堅調で葛飾区▲0.1%を除き、全ての区が上昇となっています。特に、千代田区は3.1%上昇、中央区は2.3%上昇、港区2.7%上昇、新宿区1.2%上昇、品川区1.7%上昇、渋谷区1.2%上昇と1%を超える上昇となった区が多数見られます。
神奈川県は、全体で0.1%上昇となりました。川崎市で1.4%上昇、横浜市は1.1%でした。いずれも都心への接近性に優り、また、再開発事業の進展などから住宅需要は堅調で横浜市の瀬谷区(0.0%)を除き全ての区が上昇となっています。
埼玉県は、全体で▲0.7%となりました。一方で、さいたま市の東北本線等、埼京線沿線の地域では、供給が少ない中、都心への交通利便性に優れ、需要も堅調なことから、さいたま市は0.3%上昇しました。
千葉県は、全体で▲0.7%となりました。船橋市は1.1%上昇し、総武本線沿線は利便性に優れ需要は堅調となっています。その他総武線沿線の市区では交通利便性に優れることから需要の回復が見られ、上昇となった市区が見られます。木更津市は1.3%上昇し、アクアラインの値下げ効果が現れていることやアウトレットモール開業など生活利便性の向上から需要は堅調となっています。
≪商業地≫
東京都23区は、全体で0.7%上昇となりました。再開発等の進展、事務所需要の増加に加え、好調なマンション素地需要等を反映し、板橋区0.0%を除き全ての区が上昇となっています。オフィスでは、新規供給の一服感もあり賃料に底入れ感が見られ、空室率の改善が進んでいます。店舗では、消費動向の回復と外国人観光客の復調が見られ、特に、銀座、表参道等の競争力が強く商業集積の高い地域は、店舗賃料に底入れ感が見られる中、再開発の進展により収益性の向上が見られます。
神奈川県は、全体で0.9%上昇しており、その中でも横浜市は1.8%上昇しています。横浜駅西口は、繁華性が高く空き店舗も少ないことから上昇基調となっており、西区が3.7%の上昇となっています。
埼玉県は、全体で▲0.8%となりました。その中でも、さいたま市は0.5%上昇しており、特に大宮区ではJR大宮駅周辺で区画整理事業の進展が見られるほか、空室率に改善が見られることから上昇しています。
千葉県は、全体で▲0.4%となりました。千葉市は▲0.3%であり、商業地の価格水準が低下したことから、利便性に優りマンション利用転換が可能な地域では、ワンルームマンションを中心に需要が見られ下落率が縮小しています。
以上、前回の地価調査に比べ、低金利や住宅ローン減税等の施策による住宅需要の下支えもあって住宅地及び商業地ともに東京都・神奈川県では上昇に転じ、埼玉県・千葉県においても下落率は縮小しました。さらに2020年の東京オリンピックの影響により、都心部の地価が上昇し、現在までマンション業者が触手しなかった土地であっても、立地条件等によっては、マンション業者の需要が見込まれるような事象が生じる可能性がありますので、広大地の判定に際して、今後はさらに新築マンションの建設動向にも十分ご注意下さい。
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